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「今村 哲」展

今村哲氏とその作品

「県民ギャラリー」は、エントランスのショップの奥、喫茶室の隣に位置している。6月3日から7月20日まで『今村哲展』が開催されていた。この展示室は、県民のための貸しギャラリーとして使われることが多かったが、「今村哲展」は、美術館側からの発信で、注目すべき中堅・新鋭作家の作品を紹介するということで、ちょうど、今村氏ご自身でのギャラリートークの日に取材することができた。

展示室入り口近くに迷路の仕掛け、真っ暗な、窮屈な通路を巡り、中心らしいところにボワーと薄明かりの空間とともに、四方に作品があらわれた。非現実的な感覚の場所に放り出され、少し戸惑いながら、今まで、視覚を、平衡感覚を、触覚を、積極的に使って作品を探索した覚えがなく、不思議な世界にしばらく浸ることができた。

次の作品は、何かの形を霧の向こうに閉じ込めたような、でも、ぼやけた形は固まりとして迫ってくる。その横に作品の関連のある物語らしい文章が架けられていた。今村氏の説明で、作品に描かれている形はまず線描し、その上から蜜蝋を塗る。さらに、蜜蝋を削り取りながら下に描いた線を浮き上がらすという。別の作品には、蜜蝋そのものが固まりとしておおきな雫のようにカンバスに張り付いて、特に、「Presence」の作品は、乳白色の蜜蝋のテスクチャーを実際に触れてみたいと思ってしまうほど、感覚的に心地よいものを感じた。また、足下にも作品が並べられていたり、天井からぶら下がっている作品があったり、バベルの塔のような立体に登り、望遠鏡で覗いたり、いろいろな仕掛けで、すこしワクワクしながらみた。

今村氏の好きな作家は、"ポロック""マチス"とのこと、ポロックやマチスにみるモダニズムは、美術作品を平面と立体に還元した。それを吸収された今村氏が、現代美術作品の展示は壁と床が可変的で、平面、立体の枠を越えて、作品を設置する空間全体が作品となる構成を考えられたのは自然なことなのだろう。今回の展覧会の感想を尋ねると、「この展示室の大きな空間での作品が、ギャラリーや自分のアトリエにある時よりずっといい。」とおっしゃった。逆に言うと、ただの広い箱のような空間の県民ギャラリーが今村氏の絵やテキストやトンネルで、架空の今村ワールドを醸しだし、精神的、知的遊園地のような場になって、私たちの知的興味を満たしてくれたと言えるのかも知れない。

(広報活動部 S)

友の会だより 54号より、2000.7.25

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