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作家訪問〈5〉 元永定正

元永定正さんというと「Nyu Nyu Nyu」など明るくユーモラスな作品で知られ、思わず微笑まれる人も多いと思うが、立春を過ぎた2月5日、森本さんとご一緒に私達広報部員7名は、上野市三田にある元永さんのアトリエを訪問した。日常の煩雑さを離れ庵を結ぶのに格好な鄙の里に、元永さんの白い洋風のアトリエがあった。

お出迎え下さった奥様の笑顔のように優しく明るいひかり一杯の白いリビングルームには、元永さんご一家の楽しい作品が溢れている。「まあ、ステキ」思わず歓声が上がる。椅子やオブジェやタピストリーなどのカラフルな色調が白い部屋と調和して、まさにここは元永さんの世界だ。

スウェーターにジーンズ姿の元永さんは、人懐っこい笑顔で私達を迎えて下さった。大きな元永さんのピンと伸びた背筋が気持ちいい。

元永定正さんは、1922年上野市に生まれ、郷里で浜辺萬吉に師事。神戸に移り、1955年具体美術協会に参加。1964年現代日本美術展で優秀賞を受賞。以後国際的に幅広く活躍され、1991年三重県立美術館で個展を開催。昨年のワークショップでは子供達の指導にあたられた。お住まいは兵庫県宝塚市で、作品制作の時だけ上野市のアトリエに来られるそうだ。

「(作品をつくるのに)長いことかかりまっしゃろな、もとなが(・・・・・)ですさかい。」などと楽しい駄酒落を入れながら、生立ち、神戸での苦労話など面白おかしくさらりとお話下さる。また作品の下地は、電車の中とか普段の生活の中で閃いた○や△のイメージをメモに書き留めておいたものだそうだ。インスピレーションを大切にしたいので必ずメモをとるとのこと。

「辛いことばかりやと、どっかに自惚れがないと生きてられへん。」「作品は一点、一点に深い思い出がある。作家にとって日記みたいなもの。その時が蘇ってくる。その時代が帰るタイムマシンやね。」と作品へのこだわりを語る。またデザインをなさってみえる奥様との出会いなども気軽に答えられ、共通のイメージを持つ一番辛辣な批評家だと目を細められる。

こうして楽しいお話の後、仕事部屋を見学させていただく。吹き抜けの白い部屋の中で、山形の独特のフォームと赤、黄、黒などの明快な色彩が、ひかり輝き踊ってみえる。100号の大作から手の平サイズの絵までが"しあわせってこんな形よ、こんな色よ"と話しかけてくるような心弾む楽しさである。ここに居ると何やらMunyu,Munyuと力が湧いてくる。

「時間を遡ると宇宙に入ってしまう。人間も、猫も、犬も、蜘蛛も、ゴキブリも皆同じ時間の中で生きている。宇宙の中のものは同じ仲間やと思う」と語る元永さんの言葉は、「宗教ではないねんけれど」と否定されながらも、どこかに「結局、宇宙は一大生命網である」《岡本かの子の人生論より》に凝縮されるような仏教思想に基づく生命観が潜んでいて、それが作品に反映し、見る者に不思議な力を与えているのかもしれない。

「日本人はもっと日本を自覚せなあかん。」明治以来の西洋崇拝主義の偏った価値観に、じくじたる思いがあるのだろう。国際的に活躍されている元永さんの言葉だけに、深く反省させられる。

こうして作品に目を奪われているうちに時はたち、長居を詫びておいとまをする私達を、姿が見えなくなるまで見送って下さった元永さんご夫婦。お二人の優しいお心遣いに感謝しながら、より一層敬愛をこめた親近感を覚え、訪問できたことを大変嬉しく思った。

(山本佳葉)

友の会だより 41号より、1996.3.25

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