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〈座談会〉「まつりの造形」展によせて

美術館では9月24日から11月13日まで「まつりの造形」展が開かれています。北は青森から南は沖縄まで、各地方のまつりに使われた造形物92件が展示されています。広いエントランスホールー杯に置かれた大綱の造形物にはびっくりしました。去る10月5日、この展覧会を担当された土田学芸員にお話を伺ってみました。


○展覧会としては珍しいものですが、もう新聞社などは取材に来ましたか。

土田 少しずつ取材には来ています。今まつり博三重が開かれていますし、これから国民文化祭も行われるので、マスコミも色々と取材に忙しいのではないでしょうか。

○この展覧会はやはりまつり博に関連して企画されたのですか。

土田 そうです。きっかけは国民文化祭も開催されるし、美術館では何をするのかということで企画されました。まつりというのは人が仮面や衣装をつけて行うパフォーマンスであり、その際に使われる物は、藁や紙で作られたものが多く、本来毎年こわしては作りかえていくものです。しかしこれらの物は、日本人の生活文化から生み出された素晴らしいものであり、従来の美術作品という観念を離れた優れた造形物して取りあげてみてはということで企画されました。

○作品を集める際の基準といいますか、どういう方向でどういう展覧会にしようと考えられたのですか。また準備はいつ頃から始められたのですか。

土田 一年程前から考えてはいたのですが、普段親しみがなく、知識も少ない分野なので正直言ってどこから手を付けてよいのかわからなかったのです。企画検討はずっとしていたのですが、実際動き始めたのは半年ほど前からです。それから、地域的な限定はしておりませんが、普通展覧会を開く場合は、どこに価値ある良い作品があるのか大体の見当をつけて、同じレベルのものを集めますが、今回の場合は実際に見ていないものも多く、全国しらみつぶしに廻ってみるわけにもいかず、各地方を訪ね廻って行く中で美術作品としてだけでなく、造形物として興味深いものかどうか等考えながらイメージをふくらませていったと言えます。もちろん、四天王寺の舞楽面・装束等は優れた美術作品としてリストに入れることは考えていました。

○出品交渉についての苦労話等お聞かせ下さい。

土田 今回の展覧会は、樽物館や市町村教育委員会から情報をいただくなど、色々と協力をしていただきました。展示物を見てもわかるように、東北地方や九州・沖縄の物も多く、山奥の100戸位の集落へ行ったり、山間部の神社を訪ねたり、交通の不便な所なので時間のロス・熨スく、せっかく長時間山道を車で揺られて行っても無駄骨だったということもあり結構大変でした。しかし、お会いした方々は人柄が良く、作品の出品にも協力的で、まつりが終った直後に行っても、面倒がらずもう一度作り直して下さるなどとても親切で助かりました。

○何かエピソードはありませんか。

土田 これといったエピソードはありません。今回は都会のもの、いわゆる祇園祭系統のまつりで使われる山車の類は、物理的な制約もあり、搬入、輸送に相当無理があるので展示されておりません。しかし山深い人に知られていないような小さな集落で優れたまつりの造形物が伝承されており、人々の手で毎年欠かさずまつりが行われているということがとても印象的でした。また村の人は協力的で作品も喜んで提供して下さり大変嬉しく思いました。

○たくさん仮面が展示されていますが、恐ろしい表情の仮面が多い中で沖縄のアンガマの面は面白いですね。これは何のために使われるのですか。

土田 博物館でアンガマのビデオを見せていただいたのですが、一種の芸能に使う面です。アンガマというのはあの世からやって来た精霊たちで、人々に悪さをするのでもてなして送り返すという宗教的な意味があるようです。見ていると明るく、面白いやり取りがあって娯楽的でもあります。

○展示の時もご苦労されたと伺っておりますが‥‥。

土田 まつりの衣装をマネキンに着せるのがむずかしく、小さすぎたり、また重さに耐えなかったりで何度も着せ直したり、結構手間どり、前日は夜遅くまで展示作業をしました。

○最後に一言ご感想をお聞かせ下さい。

土田 最初はどこから手をつけてよいのか見当がつかなかったので大変でしたが、その反面発見することが多く、素人の手で見事なまつりの造形物が毎年新しく作られているということ、季節ごとにまつりが行われるリズムは自然のリズムが基本になっていることを改めて感じました。この展覧会に携ったことによって、日本の生活文化の素晴らしさと造形物を見直すよい機会となり自分にとって得る所が多いでした。

○ご多忙の中、長時間お話をしていただきありがとうございました。
 この他、ここに記すことはできませんが、黒川能の面のこと、犬山祭の子供衣装のこと、まつりに関連した事柄等たくさんお伺
 いしました。

(富田さよ子)

友の会だより 37号より、1994・11・25

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