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ドイツ旅行記

森本 孝(学芸員)

ドイツ文化センター、独日協会、ミュージアム・パダゴギッシュ(美術館教育センター)、美術館ではノイエ・ナショナル・ギャラリー(新国立美術館)の方々、あるいはダーレムにある東洋美術館のキューレター(学芸員)といった方には随分お世話になつた。ヨーロッパでは、キューレターは大学教授より偉い人。私が日本人でしかも公立美術館の学芸員であったことから、たいへん歓迎していただき、どこを訪問しても『興味を持つことは何か』『何を知りたいのか』などを聞いて、必要な所をすぐに紹介下さる人ばかり。知りたいことなどを気軽に言うものだから、親切なことは有難いことなのだけれど、訪問しなければならないところがどんどん増えていくのにはまいってしまった。日常の会話はそこそこできるようになっても、専門的なことになれば通訳がいなければ何にも理解できない。ところが、通訳していただく人を捜すのがまた一苦労。語学ができれば、もっとたくさんの収穫があったろう。これが残念でならない。

ドイツは伝統を非常に大切にする国。個人の住居や店舗であっても外観は強力な規制力を持つ都市計画に基づいて形成されている。町並みや樹木は統一され、非常に美しい。ドイツと日本は第二次世界大戦で敗れても、その打撃と混乱から立ち直り、現在では共にアメリカに次ぐ経済大国となっているが、美術館や博物館を比較すると、その相違は大きい。ドイツには都市国家の形成と共に、その権力を示す意味合いを背景に持ちながらも、文化に力をそそいできた長い歴史の重みがある。ドイツでは、美術館は公共のものという認識がある。日本の場合、文化は個人の愛玩物という傾向が強く、近年になって各地域に美術館・博物館がようやく誕生した状況。ドイツでは自分の住む都市の美術館・博物館を自分たちのものであると考えている人は非常に多い。だからこそ、美術館の収蔵作品を充実させるために、美術館の運営のため多額の寄付をする人もいる。

入館するとお金の入ったアクリルのケースが目につく。展示されている作品を解説したパンフレットの料金を、美術館から出るときに自分で計算してお金を入れる箱がそれ。パンフレット1枚10円弱であるにもかかわらず、高額紙幣が必ず入っている。これは、パンフレットをつくったり、子供の造形教室を開催するなど、美術館を市民にできるだけうまく利用いただくための教育普及活動を実施し、またそのために必要な諸研究を行うミュージアム・パダゴギッシュヘの援助であるとのこと。

三重県立美術館の場合、『三重県立美術館協力会』『岡田文化財団』という二つの財団があり、行財政の仕組みに馴染まない部分をカバーし、財政的な援助もいただき、『友の会』とボランティア『けやきの会』が人的援助を惜しまず行っていただいているが、この四つの合わせた組織が欧米においては『友の会』で、美術館への強力な支援団体としての機能を果たしている。(だから、三重県立美術館には欧米型の支援団体『友の会』が存在していることになる。)

午前中はゲーテ・インステイテュードでドイツ語を敢えていただいていたが、定刻の8時半は真暗。そこそこドイツ語が話せるようになると、なかなか起きることができなくなってしまった。午後は美術館や博物館へ、夜はコンサートやオペラ鑑賞と、優雅な生活のようであるが、一人でゆったりしている自由な時間はほとんどなく、慌ただしく約2ヵ月を過ごし、ベルリンを出発してハノーバー、ミュンヘン、シュツットガルト、ケルン、ボン、モンヘングラドバッハ、デュッセルドルフ、その後スイスのバーゼル、チューリッヒを旅行して帰国した。

(もりもと たかし・学芸員)

友の会だより no.13, 1986.11.5

ドイツでの研修を終えて」友の会だよりno.11
ドイツからかえって」友の会だよりno.12
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