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ドイツからかえって

森本 孝(学芸員)

ドイツを訪問したとき、日本人であることを有難く思った。差別というわけではないとしても、日本人には特に親しみを持って接してくれるドイツ。この点がフランスなどとは様相を全く異にするところだろう。ミュンヘンの『HB』(ハーベー)という酒場で、合ったばかりの先輩の男性が、日本人と知ると、何年釆の友人であるかのような親しみを示しながら、こっそりと『今度はイタリア抜きでやろうな』と言う。初めは何のことか理解できなかったが、「大戦で負けたのはイタリアが入っていたからで、イタリアを抜いてドイツと日本が再度同盟を結び戦争を始めれば今度は勝てるはずだ、悪いのはイタリアであった、」ということらしい。この男性からビールをご馳走になり、カタコトのドイツ語しか喋れないながら1時間少々お話をした後、もう時間が無いことを告げると、陽気に『また合おう、今日は楽しかった』と言って別れたこともあった。

ドイツ滞在中、ほとんど外食。ベルリンには世界各国の料理店があったが、おかげで好むと好まぎるにかかわらず、ベルリンに居ながらにしてそれを味わう機会を得た。ドイツ料理を別として、最も美味しかったのはロシア料理。ペリメニ(ロシア風水ぎょうぎ)とボルシテ(味噌味のシチュウ)が特に良かった。レストランヘ入って美味しい料理にありつく良い方法の一一つに、『私は何が良いのか分からない。推薦してくれ』と言えばいい。すると『肉が良いのか、ヴルスト(ソーセージ)がよいのか』聞かれ、『ヴルストが好い』と言えば『ゆでたのが好いのか、いためたのが好いのか』など次々に質問しながら、こちらが理解するまで根気良くつき合ってくれて、しかもその店の自慢料理にありつける。足元を見てふっかける店もなく、極めて良心的。しかし、朝食をカフェでとり、お金を払おうとしたら、担当の女性が休憩時間に入ったということでお金を支払うことがなかなかできず、カフェで2時間以上の時間をつぶさなければならなかった、という困ったこともあった。日本では考えられないほどのんびりしたところもあるけれど、ドイツは異国人に対し親切な国であることは間違いない。ベルリン・フィルハーモニーでのカラヤン指揮のコンサートを聞きたくて、当日券を胃うため発券所で並んでいると、『都合で行けなくなったから』という理由で見も知らない日本人に無料で最上席のチケットを下さる女性もいた。

つづく

友の会だより no.12, 1986.7.10

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