美術館のコレクション(2018年度常設展示第4期)作品リスト
2018年12月26日(水)ー2019年3月17日(日)第1室:パララックス―風景の奥行き
パララックス(Parallax/両眼視差)は、右目と左目からの距離や角度の違いを意味し、私たちが物体の立体感や風景の奥行きを知覚できる主な要因とされています。風景の奥行きは、この両眼視差のほか、道や川が遠くに向かうにつれて先がすぼまっていく「線遠近法」、大気の効果によって遠ざかるほどに霞みがかっていく「空気遠近法」、あるいは、石ころや草木が距離に応じた密度や大きさで見える地表の「肌理」、さらには、山の稜線の重なり合いや、海岸線の入り組んだ様子など、大地に広がる多彩な要素の組み合わせによって知覚されています。
かつて、モダン・アートの歴史や言説において、風景の経験を彩るこの奥行きの再現が、絵画固有の要素「平面性」に反する「空間的イリュージョン」として排除されていたことがありました。
しかし、実際には、自らが知覚した風景の豊かな相貌を描き残そうと、絵画だからこそできる奥行きの表現を多くの画家たちが追求していました。
本展示室では、企画展「パラランドスケープ ”風景”をめぐる想像力の現在」にちなんで、画家たちが試みたそれら多様な奥行きや遠近の表現を、三重県立美術館所蔵の風景画を通してご紹介します。
西洋の伝統的な絵画が磨き上げてきた透視図法や明暗表現、画面の下から上へと積み上げられる前景、中景、遠景の表現、画面周縁部に枝や草木のモチーフを配した強調された奥行き、さらには、風景との感情的な隔たりや現実と記憶の風景の相違といった概念的な”遠近”まで、キャンバス平面上に表現された多彩な奥行きをお楽しみください。
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 | 寄贈者 |
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司馬江漢 | 三囲之景図 | 1787(天明7)年 | 銅版彩色・紙 | 25.8×37.8 | |
フォンタネージ、アントニオ | 沼の落日 | 1876-78年頃 | 油彩・キャンバス | 39.5×61.0 | 公益財団法人岡田文化財団寄贈 |
浅井忠 | 小丹波村 | 1893(明治26)年 | 油彩・キャンバス(パネル貼り) | 27.0×39.0 | |
和田英作 | 富士 | 1909(明治42)年 | 油彩・キャンバス | 53.3×72.9 | 公益財団法人岡田文化財団寄贈 |
鹿子木孟郎 | 京洛落葉 | 1904(明治37)年 | 油彩・キャンバス | 60.4×75.5 | |
向井潤吉 | 山野新雪(長野県上水内郡戸隠村越水) | 1979(昭和54)年 | 油彩・キャンバス | 97.0×145 | 作者寄贈 |
モネ、クロード | ラ・ロシュブロンドの村(夕暮れの印象) | 1889年 | 油彩・キャンバス | 73.9×92.8 | 公益財団法人岡田文化財団寄贈 |
ボナール、ピエール | ヴェルノンのセーヌ川 | 1912年 | 油彩・キャンバス | 34.3×55.8 | 三井貞三氏寄贈 |
鈴木金平 | 島田風景 | 1913(大正2)年 | 油彩・キャンバス | 53.1×45.7 | 鈴木男浪氏寄贈 |
北川民次 | 海への道 | 1942(昭和17)年 | 油彩・キャンバス | 91.3×117 | |
藤島武二 | 大王岬に打ち寄せる怒濤 | 1932(昭和7)年 | 油彩・キャンバス | 73.3×100 | 公益財団法人岡田文化財団寄贈 |
中谷泰 | 雪どけ | 1976(昭和51)年 | 油彩・キャンバス | 91.0×100 | |
正宗得三郎 | ヴェトイユの春 | 1914(大正3)年 | 油彩・キャンバス | 62.0×80.5 | |
小出楢重 | 六月の風景 | 1929(昭和4)年 | 油彩・キャンバス | 53.0×65.1 | |
梅原龍三郎 | 霧島 | 1936(昭和11)年 | 油彩・キャンバス | 65.0×80.3 | 公益財団法人岡田文化財団寄贈 |
岸田劉生 | 麦二三寸 | 1920(大正9)年 | 油彩・キャンバス | 37.5×45.5 | |
萬鐵五郎 | 木の間よりの風景 | 1918(大正7)年頃 | 油彩・キャンバス | 54.3×45.5 | |
佐伯祐三 | サンタンヌ教会 | 1928(昭和3)年 | 油彩・キャンバス | 72.5×59.7 | |
前田寛治 | 風景 | 1924(大正13)年頃 | 油彩・キャンバス | 50.0×72.8 | |
小出楢重 | パリ・ソンムラールの宿 | 1922(大正11)年 | 油彩・板 | 51.5×44.5 | |
清水登之 | 風景 | 1921(大正10)年 | 油彩・キャンバス | 48.6×58.9 | |
松本竣介 | 駅の裏 | 1942(昭和17)年 | 油彩・キャンバス | 50.0×60.6 | |
松本竣介 | 風景(三角屋根の家) | 1948(昭和23)年頃 | インク・紙 | 22.0×29.5 | |
松本竣介 | 風景 | 1946(昭和21)年 | インク、コンテ、鉛筆・紙 | 24.0×34.0 | |
松本竣介 | 街 | 1946(昭和21)年 | インク・紙 | 24.0×28.0 | |
中川一政 | 目黒風景 | 1923(大正12)年 | 油彩・キャンバス | 45.5×53.0 | |
木村忠太 | 初夏 | 1975(昭和50)年 | 油彩・キャンバス | 130×162 | |
荒川朋子 | 古道 | 2014(平成26)年 | 油彩・キャンバス | 130.3×194.0 | 寄託品 |
渡部裕二 | Forest in Deep 72 | 2014(平成26)年 | 鉛筆・紙 | 59.4×84.0 | 寄託品 |
渡部裕二 | Rest 35 | 2014(平成26)年 | 鉛筆・紙 | 38.6×54.0 | 寄託品 |
渡部裕二 | Eternal 04 | 2014(平成26)年 | 鉛筆・紙 | 54.0×38.6 | 寄託品 |
第2室:西洋絵画と版画
この展示室では、当館の西洋美術コレクションの中から同じ作家の油彩画と版画をそれぞれ選んで並べて展示します。版画というと、複製可能な(複製あるいは量産を前提とした)作品であることから、一点限りの油彩画に比べて展示的価値が低いとみなされることがあります。ヴァルター・ベンヤミンという哲学者は、「複製技術時代の芸術作品」(1936年)という論文の中で、絵画や彫刻はオリジナル作品が放つ伝統的な尊厳、アウラを失うと述べています。しかし本当にそうでしょうか。例えば、スペインの画家ゴヤが手がけた銅版画は、小さな空間の中に油彩画では描けなかった世界が表現されています。また、版画という制作方法に積極的な意義を見出していた画家もいます。ミロは、単品制作の絵画に比べて、版画は自己のメッセージの届く範囲を広げることができ、しかも版画制作を通じて自身の創造性をさらに向上させることができると語りました。油彩画、版画の技法・素材の違いを味わい、美術家たちの個性豊かな表現をお楽しみください。
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 | 寄贈者 |
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ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | アルベルト・フォラステールの肖像 | 1804年頃 | 油彩・キャンバス | 45.9×37.5 | 公益財団法人岡田文化財団寄贈 |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 闘牛技(10)《カルロス5世、バリャドリード闘牛場で、槍で牡牛を突く》 | 1815-16年(第4版:1905) | エッチング、アクアティント、バーニッシャー、ドライポイント、ビュラン・紙 | 27.8×43.5 | |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 闘牛技(11)《英雄エル・シッド、別の牡牛を槍で突く》 | 1815-16年(第4版:1905) | エッチング、アクアティント、バーニッシャー、ビュラン・紙 | 27.8×43.5 | |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 闘牛技(18)《サラゴーサ闘牛場でのマルティンチョの無謀》 | 1815-16年(第4版:1905) | エッチング、アクアティント、バーニッシャー、ドライポイント・紙 | 27.8×43.5 | |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 闘牛技(19)《同じ闘牛場でマルティンチョが見せたもう一つの狂気の沙汰》 | 1815年(第4版:1905) | エッチング、アクアティント、バーニッシャー、ドライポイント、ビュラン・紙 | 27.8×43.5 | |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 闘牛技(29)《牡牛から身をかわすペペ・イーリョ》 | 1815-16年(第4版:1905) | エッチング、アクアティント、バーニッシャー、ドライポイント、ビュラン・紙 | 27.8×43.5 | |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 闘牛技(33)《マドリード闘牛場におけるペペ・イーリョの不運な死》 | 1815-16年(第4版:1905) | エッチング、アクアティント、バーニッシャー、ドライポイント、ビュラン・紙 | 27.8×43.5 | |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 妄(1)《女の妄》 | 1815-24年 出版:1930年 |
エッチング、アクアティント、ドライポイント(?)・紙 | 24.4×35.5 (紙38.0×56.0) |
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ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 妄(3)《滑稽の妄》 | 1815-24年 出版:1930年 |
エッチング、アクアティント、ドライポイント・紙 | 24.4×35.5 (紙38.0×56.0) |
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ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 妄(5)《飛行の妄》 | 1815-24年 出版:1930年 |
エッチング、アクアティント・紙 | 24.4×35.5 (紙38.0×56.0) |
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ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 妄(8)《袋詰めの人たち》 | 1815-24年 出版:1930年 |
エッチング、アクアティント、バーニッシャー・紙 | 24.4×35.5 (紙38.0×56.0) |
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ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 妄(12)《陽気の妄》 | 1815-24年 出版:1930年 |
エッチング、アクアティント、バーニッシャー、ドライポイント・紙 | 24.4×35.5 (紙38.0×56.0) |
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ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 妄(13)《飛翔法》 | 1815-24年 出版:1930年 |
エッチング、アクアティント、ドライポイント(?)・紙 | 24.4×35.5 (紙38.0×56.0) |
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シャガール、マルク | 枝 | 1956-62年 | 油彩・キャンバス | 150×120 | 公益財団法人岡田文化財団寄贈 |
シャガール、マルク | 版画集「サーカス」 全38点のうち6点 | 1967年 | リトグラフ・紙 | 42.0×32.0, 42.0×64.0 | 公益財団法人岡田文化財団寄贈 |
ルオー、ジョルジュ | キリスト磔刑 | 1939年頃 | 油彩・紙(キャンバスで裏貼) | 62.7×47.1 | 公益財団法人岡田文化財団寄贈 |
ルオー、ジョルジュ | 受難(2)<街はずれのキリスト> | 1935年 | シュガー・アクアティント、アクアティント(多色)・紙 | 29.7×20.2 | |
ルオー、ジョルジュ | 受難(5)<キリストと聖女> | 1936年 | シュガー・アクアティント、アクアティント(多色)・紙 | 31.0×20.7 | |
ルオー、ジョルジュ | 受難(6)<キリストと貧者たち> | 1936年 | シュガー・アクアティント、アクアティント(多色)・紙 | 29.0×20.7 | |
ルオー、ジョルジュ | 受難(9)<この苦しむ人を見よ> | 1936年 | シュガー・アクアティント、アクアティント(多色)・紙 | 30.5×21.3 | |
ルオー、ジョルジュ | 受難(13)<羽飾りをつけた婦人> | 1936年 | シュガー・アクアティント、アクアティント(多色)・紙 | 31.0×21.0 | |
ルオー、ジョルジュ | 受難(14)<出会い> | 1936年 | シュガー・アクアティント、アクアティント(多色)・紙 | 30.8×21.8 | |
ルドン、オディロン | アレゴリー-太陽によって赤く染められたのではない赤い木 | 1905年 | 油彩・キャンバス | 46×35.5 | |
ルドン、オディロン | ヨハネ黙示録(1)《-その右手に七つの星を持ち、口からは鋭いもろ刃のつるぎがつき出ていた。》 | 1899年 | リトグラフ・紙 | 28.7×20.9 | |
ルドン、オディロン | ヨハネ黙示録(3)《・・・そして、それに乗っている者の名は「死」と言った、》 | 1899年 | リトグラフ・紙 | 30.6×22.5 | |
ルドン、オディロン | ヨハネ黙示録(6)《・・・ひとりの女が太陽を着て、》 | 1899年 | リトグラフ・紙 | 28.7×23.0 | |
ルドン、オディロン | ヨハネ黙示録(8)《またわたしが見ていると、ひとりの御使が、底知れぬ所のかぎと大きな鎖とを持って、天から降りてきた;》 | 1899年 | リトグラフ・紙 | 30.3×23.2 | |
ルドン、オディロン | ヨハネ黙示録(9)《・・・これを千年の間つなぎおき;》 | 1899年 | リトグラフ・紙 | 29.8×21.0 | |
ルドン、オディロン | ヨハネ黙示録(11)《またわたし、ヨハネは、聖なる都、新しいエルサレムが、神のもとを出て、天から下って来るのを見た。》 | 1899年 | リトグラフ・紙 | 29.5×23.3 | |
ミロ、ジョアン | 女と鳥 | 1968年4月11日 | 油彩・キャンバス | 100×65.6 | 公益財団法人岡田文化財団寄贈 |
ミロ、ジョアン | 岩壁の軌跡 全6点のうち3点 | 1967年 | エッチング、 アクアチント・紙 | 各58.5×92.5 |
第3室:柳原義達をめぐるひとびと
現在、柳原義達記念館では「柳原義達――ブロンズ彫刻と原型」展を開催しています(2019年3月24日(日)まで)。ブロンズ作品と原型がまとまったかたちで多く展示されるだけでなく、今回初めてご紹介する作品資料も含まれており、彫刻家・柳原義達の創作の源泉に触れる貴重な機会となっていますので、ご覧いただければ幸いです。この展示室では、柳原義達記念館での展示に関連し、「柳原義達をめぐるひとびと」と題して柳原義達と交流のあった美術家たちの作品を収蔵資料より選んでご紹介します。
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 | 寄贈者 |
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柳原義達 | 黒人の女 | 1956(昭和31)年 | ブロンズ | 64.0×22.5×20.0 | |
柳原義達 | 赤毛の女 | 1956(昭和31)年 | ブロンズ | 62.0×14.0×13.0 | |
柳原義達 | バルザックのモデルたりし男 | 1957(昭和32)年 | ブロンズ | 43.0×23.0×29.0 | |
柳原義達 | 山本恪二さんの首 | 1940(昭和15)年 | ブロンズ | 32.5×18.0×22.0 | |
香月泰男 | 芒原 | 1968(昭和43)年 | 油彩・キャンバス | 91.1×60.7 | |
佐藤忠良 | 群馬の人 | 1952(昭和27)年 | ブロンズ | 29.5×19.0×24.0 | |
佐藤忠良 | 賢島の娘 | 1973(昭和48)年 | ブロンズ | H47.0 | |
舟越保武 | OHNO嬢 | 1982(昭和57)年 | ブロンズ | 35.0×22.0×26.0 | |
浜口陽三 | 突堤 | 1965(昭和40)年 | カラーメゾチント・紙 | 28.0×28.0 | |
浜口陽三 | 14のさくらんぼ | 1966(昭和41)年 | カラーメゾチント・紙 | 52.0×25.0 | |
浜口陽三 | 魚と果物 | 1954(昭和29)年 | メゾチント・紙 | 29.0×34.0 | |
浜口陽三 | ぶどう | 1965(昭和40)年 | メゾチント・紙 | 29.0×34.0 | |
向井良吉 | 発掘した言葉 | 1958(昭和33)年 | ブロンズ | H53.0×W32.0×D30.0 | 作者寄贈 |
向井良吉 | レクイエム | 1987(昭和62)年 | 白銅 | H48.8×W49.0×D31.0 | 作者寄贈 |
建畠覚造 | WAVING FIGURE-75 | 1988(昭和63)年 | 合板、木 | H54.0×53.0×70.0 | 作者寄贈 |
建畠覚造 | テラコッタ C | 1954年 | テラコッタ | 16×16.5×13 | 建畠嘉氏寄贈 |
建畠覚造 | CLOUD 25 | 1983年 | 合板 | 90×24×27 | 建畠嘉氏寄贈 |