美術館のコレクション(2016年度常設展示第2期)出品作品リスト
2016年6月21日(火)-9月19日(月・祝)
第1室:三重県立美術館とスペイン美術
三重県立美術館のコレクションは4本の大きな柱で支えられています。
(1)江戸時代以降の作品で三重県出身ないし三重にゆかりの深い作家の作品
(2)明治時代以降の近代洋画の流れをたどることにできる作品、また日本の近代美術に深い影響を与えた外国の作品
(3)作家の創作活動の背景を知ることのできる素描、下絵、水彩画等
(4)スペイン美術
この中で、4番目のスペイン美術については、ちょうど開館10周年を迎えた1992年、三重県とスペインのバレンシア州との間に友好提携が結ばれたことにちなみ、新たに加わった方針です。以後、25年近くにわたって集め続けられたスペイン美術の収蔵品は、今では200点を超えるまでに成長しています。数だけでなく、その内容を見ても、17世紀のムリーリョ、18世紀のゴヤ、そして20世紀のピカソ、ミロなど、各時代を代表する作家たちの活動を理解する上で重要な作品が含まれており、国内外の企画展へ貸し出す機会も増えてきています。
三重県立美術館とスペイン美術との関係は、コレクションだけにとどまりません。
1991年の『100の絵画・スペイン20世紀の美術 - ピカソから現在まで』展を最初の一歩として、1997年には、開館15周年と友好提携5周年を記念して、1980年代から活動してきたバレンシア出身の作家7名の作品を紹介する、『スペイン現代美術の動向〈移動〉-バレンシアの七人』展を開き、大きな反響を呼びました。
その後も、2006年には、スペインが誇る20世紀彫刻の巨匠エドゥアルド・チリーダを、そして今年の2月からは「鉄彫刻の父」として名高いフリオ・ゴンサレスを取り上げ、ともに国内初の本格的回顧展を開催することで、スペインの近代彫刻を積極的に紹介してきています。
美術館のコレクションllの第1室では、三重県立美術館のコレクションの一翼を担うスペイン美術をご覧いただきます。巨匠たちによる華麗な宗教画や、深い洞察力が光る肖像画など伝統的な作品から、主題だけでなく、素材や形状に対しても、革新的なアプローチが目を引く現代美術に至るまで、350年近くの時間を一気に味わうことになるでしょう。作品たちは、一見それぞれが個性的で多種多彩な表現方法を用いていますが、その奥底には、ある種の「スペインらしさ」ともいうべき、深く太い河が脈々と流れていることに気が付かれるに違いありません。
作者名 | 生没年 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法(cm) | 寄贈者 |
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ムリーリョ、バルトロメ・エステバン | 1617-1682 | アレクサンドリアの聖カタリナ | 1645-50年頃 | 油彩・キャンバス | 165×112 | |
作者不詳 | 聖ロクス(ロック) | 17世紀 | 油彩・キャンバス | 175×107 | 有川一三氏寄贈 | |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 1746-1828 | アルベルト・フォラステールの肖像 | 1804年頃 | 油彩・キャンバス | 45.9×37.5 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 1746-1828 | 闘牛技 | 1815-16年(第4版:1905) | エッチング、アクアティント、ドライポイント、ビュラン・紙 | 27.8×43.5 | |
ピカソ、パブロ | 1881-1973 | ロマの女 | 1900年 | パステル、油彩・厚紙 | 44.5×59.0 | 三重県企業庁寄託 |
ミロ、ジョアン | 1893-1983 | アルバム13 | 1948年 | リトグラフ・紙 | 56.0×45.0 | |
ミロ、ジョアン | 1893-1983 | 岩壁の軌跡 | 1967年 | エッチング、 アクアチント・紙 | 58.5×92.5 | |
ミロ、ジョアン | 1893-1983 | 女と鳥 | 1968年4月11日 | 油彩・キャンバス | 100×65.6 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
タピエス、 アントニ |
1923-2012 | ひび割れた黒と白い十字 | 1976年 | ミクストメディア・木 | 162×131 | |
バルセロ、ミケル | 1957- | 像 | 1982年 | ミクストメディア・カルトン | 111×75.5 | |
チリーダ、 エドゥアルド |
1924-2002 | ビカイナ(並外れた) XVI | 1988年 | エッチング・和紙 | 97.0×64.9 | |
チリーダ、エドゥアルド | 1924-2002 | エルツ(縁) | 1988年 | エッチング・紙 | 94.6×67.9 | |
ルビオ、アルフォンソ・サンチェス | 1959- | 苦み | 1989年 | ミクストメディア・布 | 181×181 | 大山一行氏寄贈 |
ルビオ、アルフォンソ・サンチェス | 1959- | エンジョイ・ゴルゴタ | 1989年 | ミクストメディア・布 | 61.0×184 | 大山一行氏寄贈 |
アレクサンコ、ホセ・ルイス | 1942- | ソルダイヴァー | 1990年 | 混合技法・キャンバス | 160×180 | |
アルバセテ、アルフォンソ | 1950- | 幻影 1 | 1990年 | 油彩・キャンバス | 170×150 | |
カルデイス、ジョアン | 1948- | R-816 2点組 | 1991年 | グラファイト・紙 | 各208×100 | |
サンレオーン、ホセ | 1953- | 黒い十字 | 1996年 | シルクスクリーン・エナメルシート、パネル | 300×400 | |
ナバローン、ナティビダー | 1961- | 私のからだ:鎮痛と恐れ(パートⅢ)。あなたが私をかばう時、私は安心して休む | 1997年 | ヴェルヴェット、鉄、紐 | H183×W173×D20.0 | |
ソト、ラモーン・デ | 1942- | 沈黙の建築 IV 3点組 | 1997年 | 鋼 | 各H20.5×W39.9×D4.0 | |
シシリア、ホセ・マリア | 1954- | 衝立 小さな花々 IV | 1998年 | 油彩、蝋、紙、板 | 212×124 | |
シシリア、ホセ・マリア | 1954- | 衝立 小さな花々 V | 1998年 | 油彩、蝋、紙、板 | 210×122 |
第2室:横山操《瀟湘八景》
作者名 | 生没年 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法(cm) |
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横山操 | 1920-1973 | 江天暮雪(瀟湘八景より) | 1963(昭和38)年 | 紙本墨画 | 121×243 |
洞庭秋月(瀟湘八景より) | 1963(昭和38)年 | 紙本墨画 | 121×243 | ||
漁村夕照(瀟湘八景より) | 1963(昭和38)年 | 紙本墨画 | 121×243 | ||
山市晴嵐(瀟湘八景より) | 1963(昭和38)年 | 紙本墨画 | 121×243 | ||
平沙落雁(瀟湘八景より) | 1963(昭和38)年 | 紙本墨画 | 121×243 | ||
遠浦帰帆(瀟湘八景より) | 1963(昭和38)年 | 紙本墨画 | 121×243 | ||
瀟湘夜雨(瀟湘八景より) | 1963(昭和38)年 | 紙本墨画 | 121×243 | ||
烟寺晩鐘(瀟湘八景より) | 1963(昭和38)年 | 紙本墨画 | 121×243 |
第3室:アメリカの“異邦人”
第3室では、企画展「ベン・シャーン」展にちなんだ展示をご覧いただきます。
1898年、帝政ロシアのコヴノ(現在のリトアニアのカウナス)に生まれたベン・シャーンは、8歳の時、家族と共にアメリカに移住します。
シャーンと同じ年、国吉康雄もまた、アメリカの地を踏みました。最初に腰を落ち着けたのはシアトルでした。日本からアメリカへの扉は、1896年、横浜とシアトルの間に定期航路便が設けられたことにより、大きく開きました。北大西洋を14日以内で横断するこの航路は、日本からの旅行者と移民を運ぶ動脈として機能します。1900年、シアトルに日本人会が設立されます。いわば、シアトルは日本人にとってアメリカの玄関口であったとも言えるでしょう。国吉から遅れること1年、1907年には清水登之が、シアトルを訪れます。
1914年から18年にかけての第一次世界大戦では、戦火を逃れたヨーロッパの前衛芸術家たちが当初中立国であったアメリカへと移住してきます。彼らの多くはニューヨークに居を定めました。好景気による1910年代の摩天楼の建設ラッシュとも相まって、芸術の都の冠は、パリからニューヨークへと移っていきました。アメリカへ渡った日本人画家たちの中に、ニューヨークのアート・ステューデンツ・リーグに学ぶ者が目立つのも、そのような歴史を背景にしています。
しかし、繁栄の時代は長く続きませんでした。1929年の世界恐慌、1939年の第二次世界大戦、そして1941年の太平洋戦争の勃発。アメリカの「異邦人」たちにとって、長く厳しい日々が続きます。
シャーンがユダヤ人迫害から逃れるためにアメリカを選んだように、第二次世界大戦中は多くのユダヤ系芸術家たちがアメリカを目指します。ともに1941年にアメリカに渡ったシャガールとザッキンは、故郷ヴィテブスクを同じくする幼馴染みでした。
第二次大戦後、アメリカは、政治的にも経済的にも、そして文化的にも名実ともに世界をリードしていきます。芸術を志す者は誰でも一度はアメリカを夢見るといっても過言ではありません。世界中から集まった若き才能と切磋琢磨することで、自らの制作において大きな転機を迎える作家も少なくありません。
この展示室では、「アメリカの“異邦人”」と題して、アメリカで活躍した作家たちをご紹介します。彼らがアメリカへ注ぐ眼差しは、時に異文化からの訪問者として、時にアメリカに生きる市民として、複雑な様相を呈します。時代は異なれども、アメリカを目指した作家たちの胸にはどのような思いがあったのか。それぞれの作品から感じていただければ幸いです。
作者名 | 生没年 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 | 寄贈者 |
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清水登之 | 1887-1945 | 風景 | 1921(大正10)年 | 油彩・キャンバス | 48.6×58.9 | |
清水登之 | 1887-1945 | チャプスイ店にて | 1921(大正10)年 | 油彩・キャンバス | 71.3×56.3 | |
ザッキン、オシップ | 1890-1967 | 雲への挨拶 | 1956(昭和31)年 | 水彩、油彩・紙 | 58.5×43.0 | 第三銀行寄贈 |
国吉康雄 | 1889-1953 | ストッキングをつけて横たわる女 | 1930年代 | 鉛筆・紙 | 26.6×34.2 | |
野田英夫 | 1908-1939 | 風景 | 1932(昭和7)年 | 水彩・紙 | 19.5×12.6 | |
野田英夫 | 1908-1939 | 風景 | 1936(昭和11)年 | 油彩・ボード | 30.0×45.5 | |
国吉康雄 | 1889-1953 | スカーフをつけた半裸婦 | 1938(昭和13)年頃 | 鉛筆・紙 | 35.5×43.1 | |
国吉康雄 | 1889-1953 | 曲芸師 | 1940(昭和15)年頃 | 鉛筆・紙 | 41.9×33.0 | |
北川民次 | 1894-1989 | 海への道 | 1942(昭和17)年 | 油彩・キャンバス | 91.3×117 | |
ノグチ、イサム | 1904-1988 | スレート | 1945年 | ブロンズ | 28.7×28.7×16.2 | |
シャガール、マルク | 1887-1985 | 枝 | 1956-62年 | 油彩・キャンバス | 150×120 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
桂ゆき | 1913-1991 | 作品 | 1958(昭和33)年 | 油彩・キャンバス | 120×82.0 | |
磯辺行久 | 1936- | WORK 63-28 | 1963(昭和38)年 | ミクストメディア | 181×181 | |
元永定正 | 1922-2011 | 赤と黄色と | 1963(昭和38)年 | 混合技法・キャンバス | 177×275 | |
元永定正 | 1922-2011 | 作品 | 1966(昭和41)年 | アクリル絵具・キャンバス | 225×182 | |
阿部展也 | 1913-1971 | R-26 | 1970(昭和45)年 | アクリル絵具・キャンバス | 100×92.8 | |
ネヴェルスン、ルイーズ | 1899-1988 | 無題 | 1980年代 | 木、鏡 | H82.5×W69.7×D14.0 | |
山本正道 | 1941- | エトルリアの壺 | 1985(昭和60)年 | ブロンズ | 20.0×160×30.0 | |
吉本作次 | 1959- | 水練 | 1985(昭和60)年 | 油彩、クレヨン、コラージュ・キャンバス | 227×282 | |
李康昭 | 1943- | From an Island | 1998年 | 油彩・キャンバス | 227×182 | |
秋岡美帆 | 1952- | 光の間 99-7-28 | 1999(平成11)年 | NECOプリント・麻紙 | 152×212 | 国際交流基金寄贈 |
秋岡美帆 | 1952- | 光の間 99-8-25 | 1999(平成11)年 | NECOプリント・麻紙 | 152×212 | 国際交流基金寄贈 |
野田英夫 | 1908-1939 | 人物 | 制作年不詳 | インク・紙 | 16.4×20.8 |