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表紙の作品解説 舟越桂《雪の上の影》

2002年 札幌芸術の森美術館蔵

田中善明

 舟越桂といえば、どこか憂いを秘めた女性や男性の半身像を思い出します。彼は、現代に生きる私たちが抱える不安や悲しみ、あるいは人間の尊厳といったものを、木彫を通して表現し、新たな造形世界を切り拓いてきました。舟越保武を父親にもつサラブレッドで、幼少時から粘土で動物などを作るのが好きだったとのことですが、父親は息子に対して一言もアドバイスを行わなかったばかりか、出来上がったものを褒めることもしなかったそうです。その理由は、褒めればある方向づけをおこなってしまうからだということで、ただ子どもの制作を見守るだけの教育方針が、父親とは異なる世界観を生み出したわけです。

 1980年代後半には彫刻家としてのその評価は不動のものとなりましたが、彼の表現はさらに進化を続けます。1990年代の半ば頃からは、山と融合した人物や、頭が二つある人物などが登場し、その異形のかたちは2005年からのスフィンクスシリーズで一層の深化を見せることになります。

 融合というキーワードで舟越芸術を眺めてみると、そうした進化を続けるなかにも一貫した特色がいくつか浮かんできます。例えば、木彫に皮革やブリキやゴムのチューブを組み合わせたり、作品に《夜は夜に》《山を包む私》《荒れ野で見る夢》など詩のようなタイトルをつけたりと、舟越桂は初期の頃からさまざまな異なる要素を積極的に反応させていて、私たちの想像力をかき立てる魅力をいくつも用意してくれています。

(友の会だより99号、2015年11月30日発行)

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