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三重県立美術館コレクション探訪 海老原喜之助《森と群鳥》 東洋的要素を油絵表現

田中善明

 海老原喜之助は藤田嗣治と親交を結びました。藤田は海老原のことを「エビ」、海老原は藤田を「オヤジ」と呼び合うほどの仲で、1923年、単身渡仏した海老原は、おそらく藤田の制作に対する姿勢を誰よりも身近に見てきたものと思われます。藤田が芸術の都パリで名を成したのは、現地の人々と積極的に交流したこと、そしてその交流を通じて東洋的な感性や技術を応用した表現を生み出す必要性を感じて実践したからに違いありません。藤田は東洋画で用いる墨を油絵の技法に生かすため、キャンバスづくりからこれまでにはない、オリジナルの塗料を調合して作成したことは有名です。

 一方の海老原も現地で認められた数少ない画家の一人です。彼が認められた理由として考えられるのは、やはり東洋的な要素を油絵表現の中に取り入れたからではないかと、この《森と群鳥》を見て感じます。画面全体にいきわたるその素敵な青は、青磁に見られる幽玄な青とヨーロッパの伝統的なラピスラズリの青が融合したような色彩で、きっと市販の青の油絵具に褐色やその他の絵具を絶妙に調合して生み出したものでしょう。人物が画面の中に小さく描かれることによって自然の雄大さが強調されているところも東洋画のようですし、よく観察してみると、それぞれの人物がどの方向でどういった動きをしているのかもおおよそわかるように描きながら、細い筆でちまちま描いていないところも東洋的なものを感じないではいられません。

(友の会だより94号、2014年3月31日発行)

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