このページではjavascriptを使用しています。JavaScriptが無効なため一部の機能が動作しません。
動作させるためにはJavaScriptを有効にしてください。またはブラウザの機能をご利用ください。

サイト内検索

三重県総合博物館 > コレクション > スタッフのおすすめ > 広重「東海道五十三次之内 亀山」(ひろしげ とうかいどうごじゅうさんつぎのうち かめやま)

広重「東海道五十三次之内 亀山」(ひろしげ とうかいどうごじゅうさんつぎのうち かめやま

資料名 広重「東海道五十三次之内 亀山」
(ひろしげ とうかいどうごじゅうさんつぎのうち かめやま)
時代 江戸時代
資料番号 111 寸法 たて:26.5cm
よこ:39.4cm
解説

鈴鹿の嶺々の頂が白く雪化粧をまとい、鈴鹿おろしが身にしみる冬が訪れようとしています。四季のうつろいが明確な日本では、こごえるほど冷たい雪も多くの絵師によって情感あふれる冬の風物詩のひとつとして優れた作品に仕立てられています。
街道絵・名所絵の名手として名をはせた初代・歌川広重(うたがわひろしげ)の出世作となった保永堂版「東海道五十三次之内」シリーズでも今回ご紹介する「亀山(副題:雪晴(ゆきばれ))」と「蒲原(副題:夜之雪(よるのゆき))」の2例が雪をモチーフに描かれています。双方とも街道風景に“雪”という気候変化の装いを見事にまとわせた作品としてシリーズ中の秀作に数え上げられています。
「亀山」には副題の「雪晴」に示されるとおり、前夜まで降り続いた雪がやみ、早朝の晴れ渡った空の下で、白く輝く一面の雪に遠くまで覆われた静寂な情景が描かれています。全体に雪の白を基調としつつ、淡い墨を用いて、画面の右上方から左下方にかけて斜めに渡る大胆な構図で、雪に凍てついた城壁と急峻な斜面、そして雪を被りながらも急斜面にしっかりと生える松などの樹木を描き出しています。画面左手の遠景には、徐々に緩やかになる雪景色の山々と家並みの屋根の重なりを配して風景の奥深さを表現し、画面上端の深い藍色で静かな早朝の雰囲気をあらわしています。
物音一つ聞こえてこないこの「静」の世界の中に、城門に向かう急な坂道となった街道を雪と木々に見え隠れしながら黙々と登ってゆく人と馬・長持の行列が小さく描かれ、雪晴れの静寂さをいっそう際だたせています。この「静」の画境は、亀山の一つ前の宿「庄野(副題:白雨(はくう))」の雷雨にあって走り出す人物の躍動感、また一つ先の宿「関(副題:本陣早立(ほんじんはやだち))」に描かれた本陣の出立風景の具体性とは、まったく異質のもので、広重の幅広い画風を示しています。
一方、江戸時代の亀山は、亀山藩・石川家の城下町であり、また城下を東西に縦貫する東海道の46番目の宿場も兼ねてたいへんにぎわった町です。この作品に描かれた場所は、亀山の城下町の西端を画する京口門(きょうぐちもん)付近で、城壁の単層櫓(たんそうやぐら)や木柵(もくさく)、斜面の樹木は地元に残る亀山宿の絵図に一致しています。また、遠景の家並みは、野村の集落、背後の山々は現在の市街地の北西に連なる丘陵と思われます。広重は、京口門付近の東海道の街道情景を南東側からやや俯瞰した視点で描いています。(SG)

広重「東海道五十三次之内 亀山」


広重「東海道五十三次之内 関」広重「東海道五十三次之内 庄野」
広重「東海道五十三次之内 関」        広重「東海道五十三次之内 庄野」
関連ページ 広重「東海道五十三次之内 庄野」 広重「東海道五十三次之内 庄野」
広重「東海道五十三次之内 関」 広重「東海道五十三次之内 関」
ページID:000061559