近代交通機関の代表が鉄道だった時代につくられた観光案内を兼ねた地図です。明治42(1909)年4月17日発行で、発行所は津市にあった山平太陽舘です。携帯するのに便利な折りたたみ形式のものとなっています。
北は、北海道から南は九州まで、当時、開通していた鉄道のほか、朝鮮半島や台湾、中国東北部(旧満州)の鉄道もいっしょに載っています。現在とくらべると鉄道網もまだ未整備で、鉄道だけで全国を旅行することが難しいことがわかります。そして、鉄道だけではなく、寺社や名所・旧跡、道路や航路もあわせて描かれていて、ちょっとした観光ガイドブックのような感じのものとなっています。変わったところでは、電話が普及していなかった時代ですから電報を取り扱う駅が記号で示されていたり、地名が府県名ではなくて旧国名(伊勢国や伊賀国、志摩国など)で表現されていたりします。
三重県の部分を見ると、紀勢本線や近鉄線はまだ開通していないことや県南部へ行くには、陸路か船で行くしかないということがわかります。また、伊勢神宮や夫婦岩、湯の山温泉が描かれていて、当時から観光地として知られていたことがわかります。(FK)
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