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三重県総合博物館 > コレクション > スタッフのおすすめ > 再興萬古 腥臙脂釉桜文大盃

再興萬古 腥臙脂釉桜文大盃

資料名  再興萬古 腥臙脂釉桜文大盃 (さいこうばんこ しょうえんじゆうさくらもんおおさかずき 時 代 江戸時代末
資料番号 393-42 寸 法 口径 11.1㎝
高さ  4.3㎝
解 説


 4月、桜前線の北上にともない日本列島は一気に桜の花に彩られ、はなやいだ本格的な春を迎えています。多くの人々が満開の桜のもとをそぞろ歩き、また、杯を交わし合う花見は、寒く長い冬が過ぎ陽光あふれる日本の春の訪れを象徴する風物詩です。
  ただ“花”と言えば、桜をさすようになった平安時代より以降、数ある草木の中でも、桜は最も日本人に愛される花として今日まで親しまれてきました。とりわけ、日本では4月に入学・就職など人生の新たな旅立ちのときを迎えることが多く、まさに桜はその門出を祝福するかのごとく咲き誇る花として、大切な人生の節目とともに人々の記憶に刻まれてきました。このような桜は、古くから絵画・工芸品・服飾・調度などの題材や意匠に取り入れられ、さまざまな作品が生み出されてきました。
  今回ご紹介する資料は、春の桜の花を描き込んだ再興萬古の大盃(おおさかずき)です。再興萬古は、江戸時代中頃に桑名の豪商沼波弄山(ぬなみろうざん)が始め当代一流の茶陶として人気を博した萬古焼が一度廃れたあと、江戸時代末に森有節(ゆうせつ)・千秋(せんしゅう)兄弟が萬古焼発祥の地である小向村(現在の朝日町小向)に開窯し盛絵(もりえ)・腥臙脂釉(しょうえんじゆう)・木型造りなどの新しい技法を加えて再興したものです。沼波弄山の時代の古萬古に対して、再興(復興)萬古・有節萬古と呼ばれています。
  この資料は森有節の作で、内面に盛絵の桜花2輪が配されています。透明の釉薬がかけられた白灰色の素地を背景として、小さな薄緑色の鱗片葉(りんぺんよう)や苞葉(ほうよう)の間から伸びた小花柄(しょうかへい)の先に、先端が2つに分かれた白地に薄い紅がさす5枚の花弁が開いている様が描かれています。正面を向く花には雌しべの周りに黄色い雄しべが環状にみられ、左向きの花には花弁を支える薄緑色の萼筒(がくとう)と萼裂片(がくれっぺん)が描かれ、簡素な表現ながらも桜の特徴がよく捉えられています。描かれた桜の種類は特定できませんが、オオシマザクラかカスミザクラ、あるいは、その仲間の可能性もあります。
  一方、外面には薄い桜色の腥臙脂釉が全面に施され、その上に濃い腥臙脂釉を用いて桜の花と葉をデザインした桜唐草文が描かれています。清楚な内面と華やかな桜色の外面が好対照をなしています。
  さて、春を象徴する桜が描かれたこの大盃、どのような場面で使用されたのでしょうか。花の季節に、春を寿ぐ宴、あるいは、新たな旅立ちを祝う宴で用いられたのかも知れません。(SG)

  
復興萬古 腥臙脂釉桜文大盃 内面 桜盛絵
        
      ※クリックすると大きな画像がご覧になれます
外面 桜唐草文  
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