このページではjavascriptを使用しています。JavaScriptが無効なため一部の機能が動作しません。
動作させるためにはJavaScriptを有効にしてください。またはブラウザの機能をご利用ください。

サイト内検索

三重県総合博物館 > コレクション > スタッフのおすすめ > ミエゾウ(Stegodon miensis)の臼歯(その2)

ミエゾウ(Stegodon miensis)の臼歯(その2)

資料名  学名 Stegodon miensis (Matsumoto 1941)
 和名 ミエゾウ
登録番号  Fo1312
分 類  ほ乳綱
 長鼻目
 ステゴドン科
 ステゴドン属
産 地  三重県伊賀市(旧阿山郡大山田村)真泥
 古琵琶湖層群伊賀累層
部 位  上顎骨部分 第3大臼歯
時 代  新生代第三紀鮮新世(およそ300万年前) 寸 法  臼歯部分 幅 約132ミリ
      高 約 60ミリ
解 説
 三重県で、最初にゾウの化石が発見されたのは明治15(1882年のことでした。河芸郡明村(かわげぐんあきらむら・現在の津市芸濃町林)で発見されたその化石は、臼歯のついた大きなゾウの左下顎骨(かがくこつ)でした。この標本は、「明(あきら)標本」とよばれています。現在の独立行政法人国立科学博物館に寄贈され、現在もNSM-PV2193という登録番号がつけられ、大切に保管されています。
 この「明標本」の分類名は、旧東北帝国大学の松本彦七郎博士によって、大正13(1924)年に「クリフチゾウ(Stegodon clifti」とされました。その後、別の研究者によって異なる名前が付けられましたが、昭和16(1941)年に松本博士は亜種名として「ミヘステゴドン学名 miensis)」を提唱していました。平成3(1991)年には、日本の鮮新統産の大型ステゴドンはすべて「シンシュウゾウ」に統一されたのですが、平成122000)年に国際生物科学連合で国際動物命名規約第4版が採択され、「シンシュウゾウ(学名 Stegodon shinshuensis Sawamura et al.(1979))」に対して「ミエゾウ(学名 Stegodon miensis Matsumoto(1941))」の先取権が認められることになりました。よって、それまで「シンシュウゾウ」とされていた鮮新統産の大型ステゴドンについては、県外産も含め全部「ミエゾウ」として扱うこととなりました。県外では、長崎県の壱岐島、福岡県、大分県、島根県、長野県、東京都五日市、福島県、宮城県で産出されています。これによって、ミエゾウの学名の基準となる標本は、「明標本」ということになりました。

 ミエゾウは、日本の化石ゾウでは最大のもので、鮮新世前期の約400万~300万年前の時代に生きていたゾウです。県内では他に亀山市・鈴鹿市・伊賀市・桑名市で発見されています。当時の三重県は今よりもかなり暖かかったようで、亜熱帯から暖帯性の植物やワニの化石も同じ場所から見つかっています。ミエゾウの全身骨格は日本では見つかっていませんが、同種あるいはきわめて近縁とされるコウガゾウ(黄河ゾウ)の全身骨格が中国で発見されています。その複製標本を三重県立博物館で所蔵していますが、全身の体長が7.6m、体高が3.8mもある巨大なゾウです。現在のところ、ミエゾウはこれよりやや小さかったと推測されています。

 資料の臼歯の破片は、昭和45年に発見されたものです。ゾウの歯は一時に上下左右に各1本ずつしか臼歯(奥歯)が生えません。その歯が擦り減ると、後から次の歯が押し出して生えてきます。このような生え代わりかたを水平交換といいます。ミエゾウはステゴドンというグループのものですが、ステゴドンというのは、ステゴス(屋根)+デンス()からきていて、屋根状の歯をもっているという意味です。このように化石ゾウは、最も化石として残りやすい歯を基に分類されることが多いのです。 (H)
 

 

ミエゾウの臼歯(伊賀市真泥産)
ミエゾウ復元模型


コウガゾウ(黄河ゾウ)を参考に復元したミエゾウ(オス)
関 連
ページ
ミエゾウ(Stegodon miensis)の臼歯
アケボノゾウ(側面) アケボノゾウ全身骨格標本
ミエゾウのキバ ミエゾウ(Stegodon miensis)の切歯(キバ)
コウガゾウ コウガゾウ全身骨格標本(レプリカ)
ページID:000061520