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三重県総合博物館 > コレクション > スタッフのおすすめ > 耕作図巻(こうさくずかん)

耕作図巻(こうさくずかん)

資料名 耕作図巻
(こうさくずかん)
資料番号 891
時 代 江戸時代 寸 法 たて: 31.3センチ
よこ:918.0センチ
解 説

9月に入り県内の水田地域では、ここかしこで稲刈りが行われています。機械化された現代の水田耕作では、田植え・稲刈りなどの農作業はそれぞれ短期日のうちに集中して行われますが、かつて、米作りは季節に応じた作業が一年を通して連綿とつづき、農村生活の根幹となっていました。
 今回ご紹介する『耕作図巻』は、江戸時代中期の狩野派の絵師 狩野周信の筆によるもので、米作りを中心とする一年間の農作業や農村の様子が描かれています。
 このような耕作図は、君主が描かれている民の労苦をしのび施策の方針とするための戒め的な性格の画題として中国で生まれた耕織図を源流とし、室町時代に日本に伝わった後に、四季耕作図という独立した画題となり、狩野派の絵師たちによって描き継がれてきました。中国の風俗をそのまま描く唐様のものと、身近な日本の農村風景として描かれた和様のものがあり、襖絵・屏風・巻子のほか絵馬などにも描かれています。
 今回の作品は和様の巻子装で、丘や竹木で情景を転換させながら、春夏秋冬の農作業を淡彩で描き出しています。
 早春の田起しから描きはじめ、籾蒔き・馬を使った代かきと、一年の農作業の大切な準備作業が続きます。田植えをする早乙女の傍らには、子どもたちの魚採りの情景も添えられています。暑い夏の盛り、日よけの笠を被り、青く成長した稲田に分け入って行う田の草取りは厳しい作業ですが、畦に腰を下ろして中食を摂る姿も描かれ、親近感のある構図となっています。稔りの秋を迎え、村に猿回しの芸人が訪れる頃、村は総出で行う収穫作業で活況を呈します。水田では男性たちが稲刈りを行い、農家ではハサ掛け・脱穀・籾干し・籾すりと一連の作業が滞りなく進められて、米俵が土蔵に運ばれています。一転して、白い雪に覆われた静寂な冬の村では、屋内で稲藁を用いて筵などを編み、春の作業に備えます。
 このように、この作品では多様な米作りの作業の中から主な作業風景を選び出して、一年の農作業を通覧できるように構成されています。人々は活き活きと描かれ、さらに、子どもたちの活発な遊び姿も加えて、叙情性に富んだ田園風俗を詩情豊かに表現しています。江戸時代の米作りや庶民風俗を知る上で貴重な資料です。
 なお、作者の狩野周信(1660から1728)は、江戸幕府の奥絵師を務めた木挽町狩野家の三世として、正徳3(1713)に父・常信の跡を継ぎ、享保4年(1719)に法眼を許されています。この作品は、「法眼如川周信筆」の書名からみて、周信の壮~晩年期の作と推測されます。  (SG)

秋 稲刈り

秋(稲刈りの風景)
早春 田起こし 春 籾蒔き・代かき
早春(田起こし)                      春(籾蒔き・代かき)
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春 田植え 夏 草取り
春(田植え)                          夏(草取り)
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秋 稲刈り 秋 籾干し・籾すり
秋(稲刈り)                      秋(籾干し・籾すり)
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冬 筵づくり
冬(筵づくり)
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