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輝安鉱 Stibnite (Antimonite)

資料名  輝安鉱 Stibnite(Antimonite) 成 分  Sb2S3
資料番号 RM0760 産 地  市ノ川鉱山(愛媛県西条市)
分 類  硫化鉱物 結晶系  斜方晶系
解 説

 輝安鉱(きあんこう)は、アンチモンの主要鉱石で硫化アンチモンが結晶になったものです。アンチモンは、錫(すず)や銅と混ぜることで鋳造・加工のしやすい合金をつくることができるので、かつては印刷の時に使う活字をつくるための重要な鉱物でした。
 しかし、それ以上に輝安鉱を有名にしていることは、輝安鉱の鉱物標本こそ、日本が世界に誇る一品だということです。現在、大英博物館をはじめとする世界の有名博物館では、日本で産出した輝安鉱の巨大結晶標本が大切に展示されています。これらの標本が産出した場所は、愛媛県西条市にあった市ノ川鉱山です。現在は廃坑となっていて、鉱山の坑口はコンクリートでふさがれ、周囲も寂れています。しかし、鉱山の歴史は古く、『続日本紀(しょくにほんぎ)』の文武(もんむ)天皇2(698)年7月の記事に「伊予国、白■※1を献る(いよこく、しろきなまりをたてまつる)」※2という記載が見えます。また、東大寺の盧舎那仏(るしゃなぶつ・奈良の大仏)の鋳造で使われた錫の一部は、市ノ川鉱山のアンチモンではないかといわれています。ちなみに『続日本紀』の文武天皇2(698)年11月の記事には「伊勢国、白■※1を献る(いせこく、しろきなまりをたてまつる)」※2という記載も見えます。
 輝安鉱の結晶は、長柱状で、たてにはっきりとした条線が見られます。一般的な輝安鉱は、10センチ以下の結晶が塊状になって産出します。県内でも細かい針状結晶が亀山市、松阪市、度会郡南伊勢町などで見つかっています。しかし、市ノ川鉱山では、三波川(さんばがわ)結晶片岩とそれを覆う新第三紀の礫岩を切る輝安鉱-石英の晶洞(しょうどう)から、10センチを超える巨大結晶が多数産出します。明治時代には、1メートル近い美しい長柱状結晶が産出したという記録も残っています。その姿と鈍く輝く光沢は、まるで武士の持つ日本刀のようにすら感じられます。
 県立博物館の市ノ川鉱山産の輝安鉱標本は、先端部がはっきりせず、美品とは言い難いものですが、長さ32センチで、ずっしりと重い手応えは、巨大結晶としての価値を十分にもっています。世界的に有名なものであるがゆえに、早い時期からほとんどのものが海外に流出して、日本に残っている鉱物標本が少ないことから貴重なものといえます。(M)

※1
 ■には金偏に葛の1字が入ります。
※2
 読み下し文は、新日本古典文学大系12『続日本紀 一』 1989年 岩波書店 によった。

市之川鉱山産
市ノ川鉱山産
度会郡南伊勢町(旧南島町)
度会郡南伊勢町(旧南島町)産
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