ゲンゴロウ科に分類される仲間で、日本に生息しているものは100種類を超えます。大きさは、1.5mmから40mmで、池や川に生息していて、小さな動物を食べる肉食性の昆虫です。ゲンゴロウ科のゲンゴロウは、北海道、本州、四国、九州に広く分布しています。また、朝鮮半島、台湾、中国、シベリアでの生息記録もあります。
体型は、扁平(へんぺい)な卵形で、翅(はね)は緑暗褐色で、側縁は黄色をしています。オスの前足は、だ円形に広がって、吸盤状になっています。これは、交尾の時にメスの上翅にしがみつくのに役に立ちます。メスは、翅端を除く背面に縮刻があるのが特徴です。
ゲンゴロウは、水中で生活するのに適応した体のしくみを持っています。翅と躰のすき間に空気をたくわえて、呼吸ができるようにして自由自在に水中で活動できるようになっています。また、水をかき分けて進むボートのオールのような働きをする後ろ足は、非常に太くて、これを左右同時に動かして素早く水中を直進します。
教科書や簡単な図鑑などでも紹介されているので「ゲンゴロウ」という名前は聞いたことがあると思いますが、生きている「ゲンゴロウ」を見かける機会は少ないのではないでしょうか。かつては、池沼や耕作をめた水田、湿地など産卵できる水生植物がある場所に生息していたゲンゴロウは、それほど珍しい昆虫ではありませんでした。夜に電灯などの明かりにたくさんのゲンゴロウが集まっていたものでした。
ところが、開発などで池沼や湿地が埋め立てられ、環境汚濁が進み、外来生物の増加などで生息数が減少しています。三重県内では、平成5(1993)年の観察記録を最後に、ゲンゴロウの姿は確認されていません。平成17(2005)年に刊行された『三重県レッドデータブック2005』では「絶滅危惧ⅠB類」に、また国のレッドデータブックでは「準絶滅危惧種」に分類されています。
生息数が減少したとはいえ、ゲンゴロウはどこかで生きていることでしょう。わたしたちが、自然環境の大切さに気づいて、守り、復元する努力をしなければ、ほんとうにゲンゴロウが絶滅してしまうかもしれません。(I)
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