バクチノキ(Laurocerasus zippeliana (Miq.) Browicz)
和 名 | バクチノキ | バクチノキ さく葉標本(鳥羽市産) |
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学 名 | Laurocerasus zippeliana (Miq.) Browicz | |
分 類 |
種子植物門 双子葉植物綱 離弁花亜綱 バラ科 サクラ亜科 バクチノキ属 |
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資料形態 | さく葉標本 | |
資料番号 | MPMP 12539 | |
原資料産地 | 三重県鳥羽市 | |
採 集 年 | 1925年 | |
解 説 |
バクチノキは高さが10mを超える高木で、灰黒色の幹の外皮がはがれた下から、紅黄色の木肌が現れることから、賭け事に負けた人が衣服まではぎ取られた姿にたとえて「博打木」と名づけられました。 バクチノキは関東以西、四国、九州、琉球に分布する暖地性の樹木で、県内でも東紀州や南勢地域で見ることができます。三重県は南北に長く、海から山まで多様な自然環境があり、これに支えられて多様な植物を見ることができますが、バクチノキは県内で見ることができる南方系要素の植物として注目すべき樹木のひとつです。 バクチノキが属しているバクチノキ属は、南半球の熱帯を中心に約75種類ほどが知られています。その中の一部の種が北半球に分布しており、その一種がバクチノキです。バクチノキはサクラ亜科に属する樹木ですが、秋の9月ごろに多数の白色の花を穂のようにつける花序をだし、冬になっても落葉しない常緑樹であるため、春に花開き秋に落葉するサクラと近縁であることは想像しにくいかもしれません。バクチノキがサクラ亜科である形態的特徴のひとつとして、葉柄の上部に蜜腺を持つことがあげられます。サクラの仲間は葉柄の上部や葉身の下部に蜜腺(花外蜜腺)が見られることが特徴のひとつであり、このことからサクラとの類縁関係を推測することができます。なお、蜜腺とは葉が若いときに蜜を分泌する器官で、蜜にアリなどの昆虫をおびき寄せ、葉についた害虫などを排除してもらう目的があると考えられています。 県内で見られるバクチノキの中でも北牟婁郡紀北町紀伊長島区三浦の豊浦神社にあるバクチノキの巨樹は一見の価値があります。豊浦神社社叢として県の天然記念物に指定されている森の中に、幹周り約10mのクスノキの巨樹や、タブノキ、カゴノキ、ヤマトタチバナなどの暖地性樹木とともに、幹周り3m、樹高30mのバクチノキの巨樹を見ることができます。まっすぐに天へ伸びた幹にはコブが目立つものの、滑らかな紅黄色の木肌は周囲の木々の中でも異質なモノとして目立つ存在です。 (M) |
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バクチノキ(南伊勢町) |
外皮がはがれ紅黄色の肌が現れた幹 |
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厚みと光沢がある常緑の葉 |
葉柄の蜜腺にあつまるアリ |