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三重の文化

第67回みえ県展 審査評

日本画部門審査評

 日本画部門の出品傾向を見ると、技法的にも表現的にも力量のある複数の指導者が存在し、地域の日本画を牽引しているという印象を受けた。水墨画の出品が多いことも当県展の特徴であろう。それとは裏腹なようだが、比較的色彩豊かな作品が多い点も指摘できよう。自然豊かな山野と海を前にしては、()く自然な帰結と感じる。

 意欲的な実験、日常に対する穏やかな視点など作品を通して日本画の多様な美点と可能性を伝える出品者の存在はありがたく、心強い。審査員の視点も三者三様である。しかし、互いの意見の披瀝(ひれき)による協議を挟みながら、幅広い長所、主張を持つ作品を(すく)い取る審査が可能になったと思う。

 最優秀賞「諸行無常」は沸き立つような色彩や形態に満たされた抽象的な表現が印象的な水墨作品である。黒く浸食された深みに(ほの)(あか)るい光が沈潜(ちんせん)する。どこか静けさに満ちた優品であり、作者の心情なのか、あるいはその人生に対する省察なのかと思いを巡らせたくなる、最優秀賞に相応しい作品である。優秀賞(三重県議会議長賞)「ケルンの想い出」は旅の記録であろうか、安定した構図と描写において高い技巧を示した。作者そのものが画面に入り込むような制作時間であったことと思う。同じく優秀賞(三重県教育委員会委員長賞)の「たまねぎ」は身近な食材でもあるモチーフを前に、描くほどに自然の色彩や造形の巧みさを発見してゆく喜びを十分に表現したものになった。

 各受賞作品を並べて見ると、技術的に高いものばかりではないが、どれも作者のひたむきな眼差しが画面越しに(うかが)える作品であり、受賞当落線上の多くの作品を含めての選考は全く難しい作業であった。一方、県展レベルにおいて人物画はやや敷居が高いようである。この主題においても高い水準を示す作品を期待したい。
 

日本画部門審査主任 北田 克己   

                                                                                                        


洋画部門審査評

 今年の洋画部門の出品点数は181点で、昨年より26点多く、入選作品が81点の激戦であった。全体的に見て作風には大きな変化はなく、また、突出した出来栄えの作品も少なかったように思われた。

 最優秀賞「願望」は、版画作品であるが、モティーフの選択にインパクトがあり、大画面の油彩画よりも表現性に富んでいた。白黒のコントラストも美しい。優秀賞(三重県議会議長賞)の「ヴォカリーズ(無言歌)~ラフマニノフ」は、モノクロームの画面の中、背中を見せて座る女性の孤独感が印象的で、観る者を内へと引き込んでいく力のこもった作品である。優秀賞(三重県教育委員会委員長賞)の「アイドルトレインエキスポ2016」は、津新町駅周辺を電車のモティーフで埋め尽くすという斬新な構成で、プリミティヴな要素が介在する抽象という面白い作品であった。三重県町村会長賞の「胎動」は、動きのある円形の形態をうまく配置した流動感あふれる心地よい作品である。岡田文化財団賞の「春の夜」は、先端を丸くした突起物のような小さな形態を無数に並べた版画作品であるが、凝縮された力技が水準を超えている。中日新聞社賞の「わすれえぬこと」は、震災を扱った痛ましい画面に心の深さを形象化したところにポイントがある。すばらしきみえ賞の「ともに」は、的確な写生力を示すとともに、繊細さを秘めた作品となっている。for your Dream賞の「ガレージ」は、黒とピンクの色彩の対照が美しく、鋭い線描が魅力的な作品となっている。自然の恵み賞の「忍その1」は、古い木片(もくへん)麻布(まふ)をそのまま用いた作品で、渋い画面構成の中のくすんだブルー系の色彩が美しい。伊勢志摩サミット開催記念特別賞の「春のかたち」は、切れのある筆さばきと豊かな色感を見せる優れた作品となっている。

 洋画部門は、毎年似たような作風が多く見受けられるが、もう少し新しい挑戦があってもよいように思われるので、来年に期待したい。
 

洋画部門審査主任 中谷 伸生


 

彫刻部門審査評

 応募作品の並べられた審査会場に足を踏み入れた瞬間に感じた正直な気持ちは、戸惑いであった。

 戸惑いの理由は、出品作品全体に通ずる基準の決め難さと曖昧さである。このことを別な視点で捉えれば、出品作のヴァリエーションが多いということでもある。ヴァリエーションが多いというそのこと自体は、展覧会としては望ましいことなのだが、審査にあたるものとしては困るのだ。コンペティションである限りは優劣の評価を強いられるわけだから、いくばくかは展示から除外される作品がでることになるのである。そこで、基準を統一しなければならないのだが、私が心の中で決めた基準は極めてオーソドックスに、彫刻として豊かな空間を表現し得ているか、作者のまなざしが感じられるか、素材と技法は的確であるか、ということを問うことにした。

 最優秀賞の「あなたの輪郭は日に日に曖昧になっていった-おくるみ-」は楠を寄木にして()()き、内包する空間を抱え込みながら宙に浮かされた木彫作品である。出品作中最も豊かな空間を表現していた。審査員一同最優秀作品として推すことへの異論は出なかったが、宙に浮かすテンションの決め方がいささか稚拙であることへの苦言が呈された。作品は最後の詰めが肝要である。木を彫り空間を作るだけでは表現は完結しない。その空間をどのように見せるかで制作過程全体が生きるか否かが決まってくる。これからはもう少し最後の所の緊張感を持って決定してほしい。

 優秀賞(三重県議会議長賞)の「閒(ま)」は、鉄という素材を扱いなれた作者であろうと思われた。特に台座ともいうべき広がりを持った鉄板のあしらいに、手慣れた仕上がりが見て取れた。(さび)の落ち着きの美しい作品である。

 岡田文化財団賞の「生きろ!!」は、生き物への作者のまなざしの優しさと、懸命に立ち上がり生きようとする生き物それ自体に内在する生命力を感じさせる作品である。この賞は新人に与えられる賞として位置づけられているのだが、審査が終わって後の確認で、高校生の作品であることが判り、審査員一同微笑んだ次第である。
 

彫刻部門審査主任 小清水 漸                                                                            


工芸部門審査評

 今年の特徴はこれまで最優秀賞など比較的高い賞を取ってきた作家が新たな制作に挑戦したということである。最優秀賞の赤塚敬一「生誕の泉」は小さなコーン型が楕円型の縁に無数に取り付けられた特異な鉢型の造形で、なかなか力強い。つい2年前に「人類崩壊後の創世」で最優秀賞を受賞したばかりであるが、全く新しい造形世界で成功を収めた。三重県市長会長賞の長谷川正勝「男と女」はまさに前回最優秀賞受賞者の新基軸である。前回作は第64回展中日新聞社賞「NAMI」の発展形で、それが頂点を極めたことで、新しい境地に進化した。中日新聞社賞の下川建世「高いところ」も3回前の第64回展で最優秀賞に輝いた「砦」を同じテイストの流れながらまた新しいスタイルでまとめ、孤高の城とでも言った情感を表出した。さらに優秀賞(三重県議会議長賞)の二宮邦彦「欅拭漆盛器」は前回優秀賞作品の展開、for your Dream賞の小牧昭夫「破花」は第60回展三重県町村会長賞「トーク・トーク・トーク」の展開である。二宮の作品は木工研削独特の形態と張りあるダイナミックに波打つ造形に進展がある。小牧の作品は土の構築のプロセスのより複雑かつダイナミックな動きから前作に数倍するパワーを表出することに成功した。今回は伊勢志摩サミット開催記念特別賞が新たに設けられたが、その賞に輝いた廣瀨典子「花の夜の夢」も前回の自然の恵み賞「水中花」と同じ流れで、しかも全く違うテイストのスタイルを作り出すのに成功している。

 しかし同時に忘れてならないのは新しいエネルギーも確実に発揮されていることである。岡田文化財団賞の中西雄一「寛(くつろぐ)」は、土が立ち上がって力強いポーズを取ったまま寛いでいる、といった趣向か?なかなかに迫力のある新人の登場である。優秀賞(三重県教育委員会委員長賞)の倉田美道「昇華そのⅡ」も型紙技法を用いた新しい個性である。さらにすばらしきみえ賞の森工人「色絵萬古百花百草文皿」、自然の恵み賞の伊藤佳子「夢桜」の手慣れた文様描写のうまさも推奨に値する。今後が楽しみである。
 

 工芸部門審査主任 金子 賢治 


写真部門審査評

 2年ぶりに写真部門の審査を担当させていただいた。今回は356点の応募があり、前回より11点増加している。三重県の写真家たちの表現意欲が衰えていないのは、とても素晴らしいことだと思う。

 審査していていつも強く感じるのは、出品作品のレベルの高さで、被写体を高度な技術で的確にとらえ、仕上げていく完成度の高い作品が多かった。反面、若々しい意欲、実験作がなかなか出てこないのが残念だ。全体的に応募者の年齢が上がってきているのも、その一つの要因だろう。いかに若い世代に応募してもらえるようにするのか、応募規定や賞の配分を見直していくべき時期に来ているのかもしれない。

 とはいえ、上位入賞作品は堂々たる力作ぞろいで見応えがあった。最優秀賞の山脇佳世子「魚やさんの若夫婦」は、若い二人の瞬間の表情をとらえるシャッターチャンスが絶妙で、彼らの周囲の空気感も見事に写り込んでいる。みえ県展の伝統を受け継ぐモノクロスナップの傑作といえるだろう。優秀賞(三重県議会議長賞)の岡村仲江「古風な女」は、壁の光と影を顔に見立てたアイディアがとてもよかった。「発見」の歓びが伝わってくる。優秀賞(三重県教育委員会委員長賞)の中林和男「担ぐ」は力強いクローズアップの作品である。画面の大部分を占める荷物の扱い方がよく、力感あふれる作品になった。

 新人賞にあたる岡田文化財団賞は水口道成「精」が受賞した。闇の中にひっそりと息づく植物たちを、繊細な眼差しでとらえた印象深い作品だった。すばらしきみえ賞の赤塚貞昭「雨だ急ごう」は、ローアングルの視点をうまく活かして、親子の身振りをダイナミックに定着している。

 他の入賞作品も、それぞれ特徴があり、写真表現の醍醐味を味わうことができた。来年もさらなる力作が応募されることを期待したい。
 

写真部門審査主任 飯沢 耕太郎


書部門審査評

 本年の総出品数はやや減少したものの、総点数171点の中には意欲作も含まれている。分野別では漢字・仮名・調和体・篆刻(てんこく)の各領域にわたっているが、例年通り漢字作品の出品数が過半数を超え、本展の主軸を成している。

 受賞者の作品について、いくつか感想を述べてみたい。

・最優秀賞 納所佳泉「劉基詩」
 三行書には全体のリズム感ある構成力はもとより、線の潤渇の変化、文字の大小の工夫など、作品にこもる力
 強さと豊かさが遺憾なく発揮された秀作である。
・優秀賞(三重県議会議長賞) 村手紫映「島崎藤村の文」
 漢字仮名まじりの文を三行書きにまとめたもので、素直な筆致で書き進め、程よい行間をとり、読みやすく、
 落ち着いた書風を展開した優品である。
・優秀賞(三重県教育委員会委員長賞) 石田松濤「曹學佺詩」
 安定感のある楷書で丹念に四行にわたって書き通した充実感ある作品であり、筆力とともに重厚感もにじみ出
 た佳作である。
・三重県市長会長賞 佐々木洸舟「くれてゆく」
 横広の料紙に仮名の散らし書きが力強く、墨の濃淡を駆使して斬新な書風を展開し、作品全体の構成にも優れ
 たものがあり、今後が楽しみである。
・岡田文化財団賞 百地拓窓「茶烟」
 方形の紙に十字を大書した行書には、点画に留意しつつも、奔放にして闊達(かったつ)な筆致が、明るく広がりのある世
 界を醸成した意欲作である。

 受賞作以外にも目に留まる作品があり、次回の出品を大いに期待したい。
 

書部門審査主任 古谷 稔

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