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平成27年06月02日

三重の文化

第66回みえ県展 審査評

日本画部門審査評    

  審査にあたっては、まず絵画としてしっかり出来ているか、訴えかけてくる内容はあるのか、その内容の充実を支える優れた技法や手法を有しているか、等々が評価の軸となる。さらに、絵面のすき間からみえる仕事の丹念さや誠実さ、そして新たな表現に立ち向かう独創への焔(ほのお) を見極めようと努めたつもりである。審査を終えての感想は、絵を描くことに熱中し、それに賭けている人々が東海のこの地域にこんなに居ることに驚いた。

 また、審査会場に並べられた作品一つひとつは、写実にとんだ表現や、それを昇華させた抽象的表現、自己の内面への眼差しを自然物の丹念な描写に託すなど静かな熱狂を感じさせるものが多かった。そうした様相を強く映し出した諸作が賞を受けるところとなったのは言うまでもない。

 最優秀賞となった「冬日」は、丹念な筆致で自然の細部を拾いながら根源的生命に迫った力作。時によって移ろい消え果ててゆくものと共に、それを超えて大きく包み込むような自然の深奥を作者は見つめているのだろう。優秀賞(三重県議会議長賞)の「咲き競う」は、近づくと丹念な筆の動きが全体に調和をとっていそうで、しかし安易な整合性を求めてはいない波瀾を含んだ空間が、華麗な温度のようなものを感じさせた。もう一つの優秀賞(三重県教育委員会委員長賞)「古今来光図」は時間の堆積したものへの情感を確かなモデリングと着色法で眼をみはらせるものがあった。抽象的な気持ちを具象的モチーフで表象させる難易度の高い主題ながら、濁りを抑えた色彩と力感のある構成でまとめ上げたところを評価した。

 その他にも対象から逃げることなく丹念に描いて、人や自然の内実に迫り、底光りする存在の重厚感を引き出すことに成功している質高い作品も忘れがたい。 

日本画部門審査主任 野地耕一郎   

                                                                                                        


洋画部門審査評  

 全国の県展出品数が年々減少の傾向にある中、今年の洋画部門は12点増と喜ばしい限りである。昨年度の審査評にも指摘があるので多くは語らないが、題名の付け方が安易すぎると強く感じた。我が子の名前を考える位配慮してほしい。題名は作品を生かしも殺しもする。

 最優秀賞「たゆたう」は審査員の全員一致で選ばれた。子供の体を動かす事の喜びと無限のエネルギーが優しい眼差しで力強く描かれている。大勢の子供が一つの画面に存在しながら、自分だけの世界に生きていく様は現代社会の一面を見るかのようだ。優秀賞(三重県教育委員会委員長賞)「貪食毎夜の闊歩」は、夜人気が消えた町並に野生の鹿が徘徊する様子を描いているが、薄塗りの絵具にもかかわらず独特な強い空気感が絵を支えている。優秀賞(三重県議会議長賞)「郷愁」は暗鬱とした濃密な空気感が一度見たら忘れられない。中日新聞社賞「わすれえぬこと」は、親と子の心情をプリミティブな画面にまとめている。for your Dream賞「2015.Y」は、朧気な肉体と、インパクトある赤い顔とを多感なタッチで描ききっている。三重県市長会長賞「待春」は、ストイックな姿勢と確かな描写力を評価したい。岡田文化財団賞「朝の光」は、七宝焼のような丁寧に描かれたマチエールの絵で見る程に見たことのないような、しかし懐かしいような楽しそうな、でもちょっと恐い不思議世界に見る者をいざなってくれる。すばらしきみえ賞「甍輝く関の街」は、少し日が傾きかけた頃の時間だろうか。陽射しと心地好い空気をうまく描出している。自然の恵み賞「堀坂山」は、人は大自然と向い合う時、時間が止まり、音の無い世界に迷い込む事がある。そんな作者の実感を追体験する絵である。

 絵は少し見方を変えるだけで評価が変わることもある。審査員として限られた時間、精一杯努力したつもりであるが、入選された方も、今回残念な結果に終った方も、又来年挑戦して欲しい。続ける事が一番大切な事と思っている。

 洋画部門審査主任 中澤英明

 


 

彫刻部門審査評 

 

 彫刻部門は、若い世代の出品と受賞が目立ち、将来への大きな期待を抱くことのできるものとなった。この部門は例年出品が少なく、いささか活力にかけるところが気になっていたが、今回は23人の出品者のうち10代から30代までが13人と過半数を占めた。さらに最優秀賞の横田さんが20代、優秀賞の東(あずま)さんが10代、そして受賞者8人のうち6人が10代から30代という結果となった。もちろん年齢を意識した審査を行ったわけではないので、我々もその結果に驚きを禁じ得なかった。最優秀賞の横田千明「リクガメ」は、乾漆という技法の特質をいかして、亀のずんぐりとした形態を柔らかく膨らみのある造形で表現したもので、彫刻として高く評価できるものであった。この技法は奈良、唐招提寺の《鑑真和上像》に代表されるように、古くから日本で用いられてきたもので、若いながらも、この技法による表現を追究し、早くも自らの造形を見出していることも注目すべきものであった。ただ一つ、目にダイヤモンド状に輝くものを用いたことについては、あまり良い選択とは思えなかった。他の受賞作も含めて、若い世代であるが故の未熟さが感じられるところもあったが、それを超えた個性と魅力、そして将来性を感じることのできるものであった。

 全体としては抽象による作品が減少したこと、また、小さな彫刻に工芸的な表現のものが目立ったことが気になった。今後、彫刻部門には、さらに若い世代の参加を、そしてそれに刺激を受けたより幅広い世代からの数多くの出品を期待したい。

彫刻部門審査主任 村田眞宏

                                                                                                                       


工芸部門審査評 

 今回の出品数は前回より3点増えて68点であった。全般的に公募展出品数が長期減少傾向にあって、少しでも増えるということは喜ばしいことで・ると言える。しかしそれがなかなか質的な向上につながっていないことが問題である。 

 個々には例えば長谷川正勝「波の幻想」のように、第64回みえ県展 中日新聞社賞「NAMI」を乗り越え、洗練度を増して最優秀賞に至った作品もある。また岡田文化財団賞 下木伸良「奏でるⅠ」のかなり奇抜な発想で、なおかつ緊張感のある、しかも洒落たフォルムの洗練度はたいへん優れている。また優秀賞(三重県教育委員会委員長賞) 山本憲夫「泥釉窯変〝難破船”」は、表現、技法、材料など、すべてが支離滅裂な八方破れのパワーが大変魅力的である。
すばらしきみえ賞 加藤幸男「幻想」の何か精神の内面にべっとり張り付いたような表現、三重県町村会長賞 下川建世「スイング」の瀟洒(しょうしゃ) なフォルムと質感のハーモニーは、なかなかの実力を感じさせる。 

 優秀賞(三重県議会議長賞) 二宮邦彦「欅拭漆盛器」、中日新聞社賞 山中さゆ子「自然共生」は、それぞれベテランの堅実で手慣れた表現の成果である。for your Dream賞 小川広器「ゆきあかり3」はよくガラスの特性を生かしている。

 このように受賞作はそれなりにこれまでの自身の作品を超えようとする努力を見出すことができる。しかし二宮、山中作品のところでも述べたように、このあたりが停滞の要因でもある。それは長谷川の仕事でも同じである。常に停滞、マンネリに陥る危険な穴に当面しているといって過言ではない。今回の出品作全般に言えることはそれである。

 この停滞を打ち破るのは、ひたすら作る者の表現とは何か、を問い直し続けることである。あくまでも作り手の個性が最大の問題である。既成の概念やありきたりの工芸の定式を繰り返すことに表現は息づいてこない。工芸という芸術の特性を改めて掴みなおすことが何よりも重要である。

工芸部門審査主任 金子賢治 
   


写真部門審査評   

 昨年に続いて写真部門の作品審査を担当した。今回の応募作品は345点で昨年より少し減ったが、題材は多岐にわたり、仕上げもきれいで全体の技術水準は高いと感じた。その中から入賞9点、入選190点を選出した。

 作品を審査する際に重視したことは、作者の被写体に対する解釈と、写真という表現手段の特性である偶然の出会いによって得られる瞬間をどのように捉えているかという点である。上位に選ばれた作品は大変に見応えがあったが、全体的には題材、表現方法ともにこれまでのものに似た作品が多く、いささか新鮮味に欠ける内容であった。

 どんなモノでも事柄でも、興味を持って観察を深めていくと魅力的な被写体に思えてきて、そこから独自の写真のテーマが生まれる。写真になりそうなものを追うのではなく、作者の“発見の眼”を鍛え、新たな写真世界を開拓して欲しいです。

 最優秀賞、小宮千原の「通行人」は、ビルの解体現場の内と外を対比させながら都会の喧騒を捉えた力作。突起物の影が黒々と映る白い囲いの前をうつむき加減に歩く男性の姿が強い印象を与えている。優秀賞(三重県議会議長賞)、野瀬みつ子の「寒村」は、アジアの国の小さな村での光景。三匹の犬と鶏が徘徊している路地に人影はなく、ちょっと無気味な感じである。ローキートーンに仕上げているため辺ぴな地域性が強調された。同じく優秀賞(三重県教育委員会委員長賞)、谷内浩の「午後の陽だまり」は、ビル街の憩い場といった小さな公園の様子をシンプルな画面で捉えた作品。静かで美しい光景だが、三人が離れ離れにベンチに腰かけた姿から他人との接触を避けるようになった現代の都市生活者の一面が垣間見える。三重県町村会長賞、花木義孝の「村の子どもたち」は、ガジュマルの大樹から垂れ下がる気根にぶら下がって元気いっぱいに遊ぶアジアの国の少年たちを、熟達したスナップ撮影で捉えた力作。子どもたちが持つ本来のパワーが画面に漲っている。来年も意欲的な作品を多数寄せられるよう願っています。

 写真部門審査主任 英伸三  

   


書部門審査評 

 第66回県展に出品された作品数は183点で昨年より増加しました。入選の内訳は漢字が68点、仮名が13点、調和体が15点、篆刻(てんこく) が4点です。審査に入る前に、公開審査ですので、参観者に審査方法を説明しておきました。20名近い方が審査を見守っておられました。

 今年の作品は、レベルアップが見られ、入選を決めるのに一苦労でした。また、賞候補になるような作品も多く、うれしいことでした。誤字のない作品、練成度の高いもの、明るく強い響きのある作品を選びました。必ずや会場で光を放ってくれることでしょう。 

 漢字作品に望まれることは篆、隷書作品の出品をもっと増加していただきたいこと、仮名作品では大字・中字作品に挑戦してほしいこと、調和体作品も大字が少ないこと、篆刻は、県展ワークショップがあるので、発展制作を期待したい。次に優秀作品について眺めてみましょう。

<最優秀賞>篠木峩峰「陶淵明詩句」
 力強く観る人を引きつける好作品。字体の形状と配字の工夫が効果的である。中央の黒白がこの作品を一層明るくしている。
<優秀賞(三重県議会議長賞)>西村皋風「万葉歌」
 明るく強く気品の高い作品である。一行の行立てや大小長短による行の流れもよい。
<優秀賞(三重県教育委員会委員長賞)>佐々木洸舟「春の野に」
 作品の構図に新鮮さがあり、厳しく美しい線が光っている。
<三重県町村会長賞>新田光華「呉梅村詩」
 昨年から続く連続受賞です。躍動する線の美しさが見どころ。  

 この他にすばらしきみえ賞の重厚な作品、調和体の川瀬公韻「矢田部良吉の詩」の安定した漢字と豊かな造形の仮名も見逃せない。 

 書部門審査主任 田中節山

 

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