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平成26年06月30日

三重の文化

第65回みえ県展 審査評

日本画部門審査評    

  今回の日本画の応募数は71点。ほぼ昨年と同じくらいであった。その中から入選作品を絞り込むのみ、1次・2次審査を行い、結果30作品を入選ということで決定した。その後、入賞候補作品ということで数度にわたる絞り込みと話し合いの結果、最終的に9点の作品に落ち着いた。入賞候補作品の9点はさすがに、いずれも高水準の作品であり、この中から賞の性格に応じた最終結果を決めていった。

 最優秀賞は城山正美「リビングの窓」で、審査員全員一致した。リビングの黒いレースのカーテン越しの外の景色が見えるというユニークな視点で、近景・遠景の処理も含めて、写実と幻想の境が見えない、非常に面白い作品である。優秀賞の2点のうち大喜多光子「白い影」は、透明感にあふれた表現で、色形や構図の選び取り方に才能を感じる作品である。もう一点の飯田淳子「自画像」は、作家が自分を客観的に見つめ、かつユーモラスな雰囲気漂う好感の持てる作品である。もちろん写実的な力量にも感心させられる。 

 水谷好心の「棲宿」は今回非常に多かったモノトーンの絵画(水墨画)の中で、格段の力量を示していた。岡田文化財団賞の大畑延子「風を待つ」は、ボラードと呼ばれる舟留めの上に一羽の海鳥が止まっている絵だが、その力量の並はずれた表現には驚かされた。モチーフとなる中心の題材だけではなく、周囲の空気や風までしっかりと表現されている。宮原暁子「花を刈る人」には、構図の巧みさと、少しオーバーに言えば日本画版ミレーのような雰囲気が感じられて面白い作品である。田所妙子「横断歩道」には身近なものを大事に芸術作品に仕上げる視点を、市野温子「吊し柿」には一つ一つの柿が個性的で豊かな表現を持った視点を高く評価した。そして池村百合子「柵の中」は羊の写実的表現や表情に愛にあふれた感覚が伝わって好感が持てた。今回入賞出来なかった作品においても、心に残る作品には本当に絵を楽しんで描いているという感じが伝わって来る。

 来年も頑張っていただきたい。

 

                                                       日本画審査主任 吉田 俊英

                                                                                                           


洋画部門審査評  

 自分の画力を試してみたい出品者の側にもそれぞれの諸事情はあるだろうが、今年の出品数は前年にくらべて19点少なく143点であった。公募展への出品者漸減は全国的にみられる傾向ではあっても、応募数の減少がそのまま質の低下につながらないところが、これまたこの種の展覧会の醍醐味であり、たくさんの力作をみることができて、楽しい審査であった。

 各賞ともに、今後の画業精進への課題はさまざまにあるようだが、まずは褒めておきたい。最優秀賞「卓上の詩」は瑞々しいアマチュアリズムあふれる作品。・c`ーフと色彩が調和したアンチームな雰囲気は好ましく、制作者の描く喜びを感じる。優秀賞(三重県議会議長賞)「待春」は、モノトーンが主調の鈍重な画面構成のなかに、軒先の干し物や雲間からわずかに見える青空など添景への色彩的配慮に待ちわびる春への心情が託されて、手慣れた表現。同じく優秀賞(三重県教育委員会委員長賞)「あれから三年」は、人にも動物にも見える大小の矩形のモチーフを、遠近感をもたせて画面に配置、行きつ戻りつする人間の記憶のありかたを問いかけてくる。岡田文化財団賞の「ぱーいーなーつーぷーるっ!」は、躍動感ある古代的レリーフの趣きをみせて作者の精神の若々しさを感じた。中日新聞社賞「津の街・美杉町多気2014」、どこか不穏な雰囲気を感じさせるまでに大画面を彫り込む制作者の執念を褒めたい。自然の恵み賞「いとおしきもの」は、本来のモチーフ?を90度回転させたような構成だが、独特の色彩感覚が構図の不安定さを感じさせない。三重県町村会長賞「遠のく記憶」、たくさんのモチーフを破綻なく画面におさめながら既視感と郷愁をさそう。for your Dream賞の「自画像」は、制作者の強い意志がみなぎっている。”持ち物”の画面各所への配置も効果的である。すばらしきみえ賞「関宿・朝映」は、風の流れや射しこんでくる光の動きを感じさせるほど、早朝の古宿のたたずまいをよく描いた。

 入選落選を問わず力作が多く、審査は慎重にならざるを得なかったものの、題名はいずれも即物的傾向が強く、一考を要するところだろう。

 

                                                        洋画部門審査主任 篠 雅廣                                                       

 


彫刻部門審査評 

 数年ぶりに三重県展の審査をすることになりました。彫刻部門全体の印象は、全国的に見て、レベルの高い内容であったと言うことが審査員全員の共通する印象でした。しかしながら、今年は昨年と比べ出品数が4点減り18点の出品なりました。

 審査は先ず始めに18点から12点に絞り込み入選作を決定しました。その後入選作品の中から各賞を決定しました。

 最優秀賞は、末松しずかの「無音の轟き」に決まりました。この作品は木材と石材そして鉄を組み合わせた作品で象の形態を借り、現代社会へのメッセージ性の高い作品であり、またきわめて存在感の強い作品でした。優秀賞には新鮮な構成が評価され鈴木さち子の「夏が来た」が選ばれました。又、三重県町村会長賞には横田千明の「Amo-lait」が選ばれました。脱活乾漆を用いた意欲的な作品でした。大変な力作であり大いに評価される作品ですが、残念なことにもう少し見せ方、展示の方法等に工夫が在れば表現の幅か広がり更にレベルの高い作品になったと思います。岡田文化財団賞は、沓澤佐知子の「朔月」が選ばれました。黒陶の焼き締めによる作品で、堅実な描写力が黒陶の素材感と相まって、しっとりとした表現でした。中日新聞社賞は、田中義樹の「ケッコンしちゃった‘94」が選ばれました。自己の生活の一シーンを題材に制作されたものと思われますが、真摯な態度で自己に向き合い自己との対話の中から生まれたこの作品は独自のアイデンティティーか感じられ評価されました。すばらしきみえ賞は宮永正文の「宇宙ステーション・千年の旅」、for your Dream賞は北島武裕の「兎たちの祝宴」、自然の恵み賞は上原正廣の「「ん」(ワニじゃないよ)」が受賞した。いずれも堅実な作品でした。

 今回の審査で残念ながら選外となった作品の中には技術的にかなりの力を感じられるものが数点在り、表現の方向性がもう少し絞り込まれていたら良い作品になったのではないかと感じられ、誠にもったいないと感じました。

 近年全国的に彫刻を制作する人口が現象気味ですが三重県展のような質の高い出品作品を見ると元気づけられます。制作人口の減少は残念なことでありますが、これからも多くの人々に彫刻を制作していってほしいと思っています。

 

                                                       彫刻部門審査主任 井田 勝己                                                                   

                                                    


工芸部門審査評 

 工芸部門の出品は65点で、昨年より14点少なく、内容的にも平均的なものが目立ち、やや寂しく感じられた。とは言っても多くを占める陶芸を始め、染色、木工など、県展としてのレベルは高く、日頃から自身の仕事を深めておられる様子が窺われた。今回の特徴としては、人形や七宝、金工など、これまで以上にバラエティに富んだ出品があり、県展として、今後の広がりに期待を抱かせるものであった。

 入選作品45点の選定はスムーズで、審査員の意見にも大きな相違はなかった。しかし入賞作9点を絞った後、各賞の決定には悩まされた。一つには図抜けた作品がなく、入賞作品に殆ど差がなかったこと、また残念ながら、新しい発想や構想を感じさせるものが少なく、むしろ技術的に安定したものが目立ったのがその理由であろう。

 その中で、最優秀賞の赤塚敬一「人類崩壊後の創世」は、作品の構想や形態、それを支える技術力に見どころがあり、意欲的な作品として高く評価された。優秀賞(三重県議会議長賞)の古川敏弘「焼締窯変叩き壷」は歪みなど気にならない大らかさが持ち味で真正面から取り組んだ姿勢に好感が持てた。同じく優秀賞(三重県教育委員会委員長賞)の野村さつ子「森羅万象」は、創意工夫に富んだファイバー作品で、若々しい表現に作者の制作の喜びや楽しさを感じることができた。岡田文化財団賞の山岡桂子「土びら」は、自由な発想で新しい形体を追求した作品で、今後の展開を期待させるものであった。

   

                                                        工芸部門審査主任 福永 治

   


写真部門審査評   

 全体的に応募者減の部門が多い中、写真部門は367人(前回より微増)ということでかなり健闘したと思う。このところの三重県における写真熱の高まりは特筆すべきものがあるのではないだろうか。公開審査の観客席は超満員で、立ち見が出るくらいだった。その視線を背中に浴びての審査は、緊張度の高いものだった。

 結果的に、入賞作品のほとんどが、新鮮な顔ぶれだったことはとてもよかったと思う。長く活動を続けていると、知らず知らずのうちに題材や手法が固定化してくるというのはよくあることだ。今回も、特にベテラン作家の作品に「どこかで見たような」写真が目についた。それらの作品は入選までは届いても、それ以上の結果はむずかしくなってくる。周囲に同調することなく、自分で自分のやり方を見つけ出していく取り組みが、これまで以上に求められていくのではないだろうか。

 最優秀賞に選ばれた今井陽子「夏の余韻」は、これまでみえ県展ではあまり見られなかったタイプの作品である。3枚組の写真の上下がモノクローム、中がカラーという斬新な構成で、幼いころの記憶をたどりなおそうとしている。夢と現実の間を漂うような雰囲気作りがとてもうまく、最初から気になる作品だった。岡田文化財団賞の伊藤憲治「お父さん、お母さんありがとう」はスナップショットの傑作。自動車の中から手を振る花嫁の向こう側に、両親の姿をぼかして配置する画面構成は見事なものだ。優秀賞(三重県議会議長賞)の内海節「晴ればれ」の少女の満面の笑顔は、見る者を幸せにする力を発揮している。優秀賞(三重県教育委員会委員長賞)の伊藤隆彦「収穫」も気持ちがいい作品。農家の人たちの群像と収穫物を入れる袋の配置がリズミカルで、目に快い。他の入賞作も甲乙つけがたかったが、特に33歳という若さで市長会長賞を受賞した川原田洋子「昼下がり」の、不安定だが心そそる画面の傾け方が印象に残った。

 昨年くらいから、伝統を誇るみえ県展写真部門にも新しい風が吹き始めているように感じる。次回は、さらなる力作、意欲作を心から期待したい。

 

                                                写真部門審査主任 飯沢 耕太郎                                        

   


書部門審査評 

 今回の第6部「書」への出品数は全171点(漢字124点、仮名15点、調和体24点、篆刻8点)、昨年より4点多く、応募していただいた皆々様に感謝申し上げる次第です。

 審査は展示面積等の制限から100点の入選を目標とし、4部門ごとに選考を進め、さらに作品の質・内容を再検討し、各賞の作品を決定させていただきました。各部門ともに全精力を傾けた優品が出揃っておりましたが、古典の習熟度、芸術的な創意工夫、独自性の有無などを鑑み、審査員3名の合議のもとに厳正公平に当落並びに受賞作品を決定いたしました。但し、審査員の好みが多少は作用し、選にもれた中にも個性豊かな作品のあったことを申し添えておきます。

 最優秀賞:黒川由梨「劉廷芝詩」は七言二句を2行に大書したもので、その明るい紙面構成と重厚にして闊達な筆到に高い評価が寄せられました。初句の末字「東」と二句の初字「今」とを合わせて書いているのも、新たな表現として興趣をいや増しました。

 優秀賞(三重県議会議長賞):納所佳泉「大島桜」は横ものの調和体作品として全体構成に優れ、その運筆は遅速緩急の妙を発揮しています。書き進むにつれて筆が暢達しているところに、筆者の心の高揚を感得することができます。

 優秀賞(三重県教育委員会委員長賞):新田光華「陳子昂詩」は文字の大小、墨の濃淡、線の肥痩などをおりまぜ、軽快な筆致で作品を構成しています。文字の絡みと行間のバランスがよく、心地よいリズム感と余白の美しさが際立っています。

 岡田文化財団賞:佐々木洸舟「わがこころ」は潤渇の美、変化の面白さを誇示する優品で、難しい中字の仮名ながら筆は暢達し、完成度の高い仕上がりとなっています。料紙とマッチした斬新な構成も見事です。

 

                                                     書部門審査主任 角井 博

                                                            

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