平成19年度第2回文化振興拠点部会結果概要
日時 平成19年9月3日(月曜)14時から17時
会場 三重県津庁舎 6階 第66会議室
1 要旨
平成19年9月3日午後、三重県津庁舎6階 第66会議室において、第2回文化振興拠点部会を開催し、文化振興拠点について、役割や求められる機能等について、審議を行いました。
2 審議内容
第1回文化振興拠点部会の検討内容に基づき、文化振興拠点の機能・役割等について整理・検討し、さらに県立の「図書館」、「博物館」、「美術館」、「文化会館」に求められる機能等についての意見交換を行いました。
審議のようす
3 委員から出された主な質問・意見・感想
(1)文化、文化振興について
- 文化のもつ可能性と文化振興の意義について、県は文化力として人間力・地域力・創造力というものを打ち出しているが、それと異なる定義をしていないか。文化力の定義がオーソライズされているならば、それに近づけなければならない。
- 県民の文化に対する関心度が低いとは信じられない。三重県のアイデンティティーを出し、他とは説得力のある差別化をして、県民のみなさんが納得できるようなものを示して引っ張っていかないと、誰もついてこない。そのために、インパクトのあるものを持ってこないといけないのではという感じがする。
- アンケートの結果では、今は文化芸術の意識が低いが、これを5年後に取り直したらどうなるかも考えて欲しい。団塊の世代が退職し、自分の自己実現のために生涯学習が脚光を浴びる時代になるのでは。もう一つ先を見る必要がある。
- 一万人アンケートは、どういう観点で答えたのか?感性を育てることは、人間の原点である。そのことと文化芸術をつなげてみているのか?切り離した形なのでこのような結果が出ているのではないか。一人ひとりがこの問題を身近に受け止めて、そこに自分が主体者として関わりながら地域を起こしたり、三重県が育んできた歴史を土台にしたりするということは、大事ではないか。
- 文化振興は、掛け声でやっていくものではなくて、やはり一人ひとりの県民がやりたいという気持ちを盛り上げて、やっていこうとするところに手立てを講じ、様々な形で支援していく、環境を整備していく、インストラクターを育てていくことが必要。文化振興は、個人を中心にして、市町、民間、団体などが全体として総合的に取り組んでいく話であると思う。
(2)文化振興拠点について
(ア)文化振興拠点とは
- プラットホームという言葉を使ったが、コアになる個人または団体は、拠点とイコールではない。プラットホームとは様々な方が集まり、刺激しあいながらまた散っていくようなもの。個人の博士であったり、達人であったりとかは、拠点ではなくコアであり、コアが集まれば、あるいはひょっとしてコアを研究して表に出していく、そこにチャンスを与えていく、そういうところが拠点ではないか。
(イ)求められる機能等
- 様々な機能があるが一番重要なのはコレクションを持つことである。コレクションがなければ、情報発信のしようがない。
- まずは、収蔵していくことを考えないといけない。早めに、モノを保存し、整理していくことは、必要である。過去から現在までの様々なトピック・生活などを現在の社会の基礎としておさえて、将来道筋に光をあてていくことが本来の文化の役割である。拠点を考える場合、モノを残し、整理し、研究し、未来への形として発表し、そして展示していくという流れがあるのだろうと思う。様々な場所に様々な立場の人が参加し、ある部分はきわめて専門的な方が、ある部分は県民の広い層がそこでいろいろなものを知っていく、そこへ意見を述べていく。収蔵から未来へという形をおさえておかないといけない。
- 「共通機能」とあるが、すべての拠点がすべての機能を共通して持つ必要はない。この拠点はこういうことをするからこういう機能を持つ、ということでもよい。
- 医者の世界を考えると、地域でまず頼りとなるのは、あまり専門的ではないが総合的である家庭医である。それぞれの個人が相談する家庭医がまずあって、その家庭医がコーディネートして、これはこの専門医へ、と紹介するというような機能がある。文化でも、地域の拠点にもそういう作用が大事で、その性格の違いをコーディネートする機能がきっちりしていると、すべての拠点があらゆる機能を持つ必要もなくなる。
- 県立博物館には何万点もの資料があるが、整理できてないと聞いた。保存に力を入れるのか、研究に力を入れるのか、展示に力を入れるのか。どれを主にするのか優先順位を決める必要がある。
(ウ)拠点が機能するために必要なこと
- 東紀州のように、標準的な文化に積極的にアクセスするチャンスがないものからすれば、中央の役目を決めておいて、地方が、それができることによってより高まるということを最初から計画しておかないといけない。中央で優秀な企画を練って企画提案やっていただけると、小さい拠点の中である部分、中央と同じような文化環境を享受することができる。それは商業の力ではなく、文化の力だ。
(3)文化振興拠点の役割等について
- 「誰にでも開かれた場」という言い方をしているが、大学も開かれてきているので、資料1のP7の図から外してしまうことに疑問がある。
- 図書館の整理はこれでいいのか。一つの目安としてのモデルなら構わないが、「新しい県立図書館づくり~知識と情報の拠点を目指して」にも4つの機能として①情報収集支援、②学習支援、③交流支援、④成果活用支援が書かれている。様々な支援、自分たちが打って出るサービスも必要であり、いろいろな取り組みが行われている。鳥取県立図書館が、有名な例である。
- 「検討の進め方」の2番目「文化振興拠点の役割等の整理について」だが、なぜこういう整理が必要なのか分からない。今のように、複合化・総合化しているので、整理するのに注意する必要がある。市民活動もグローバル化している中で、ボランティア団体などでも広範なところで活躍されているところも結構あり、実際は入り乱れている。これを阻害する形で整理してはいけない。
- 図書館・博物館・文化会館等を荒っぽく分けると図のようになるが、もっと違った要素がある。博物館を例にあげると、資料の収集から調査研究まであげているが、そこを活用して、先生が指導して細かい観察をやる、モノに触れ実物教育をやる。現在の博物館でも体験的に来館者が勉強することもよくやっている。そこも含めてもっと幅広く表現したほうがよい。
- 博物館を「館」としてではなく「博物機能」、「博物システム」の発想でとらえられないか。一つの博物館があっても、そこでの体験は周辺の人しかできない。しかし中央の部分には中央の役割がある。あるひとつの場所をもって「博物館」だととらえてしまうと、今さらそんなものがいるのかという話になりかねない。県がモノとしてみていく部分の役割とシステムとして構築していく部分の役割、それらを合わせた形での新しい博物館の構想だとか、県内の文化の拠点をとらえていくべきではないか。
(4)県立の「図書館」「博物館」「美術館」「文化会館」に求められる機能等について
- 知と感性を分ける形は哲学でも「知性と感性」という流れで言ってきている。しかし、今どき通用するのか。県の視点として出すには、ちょっと遅れているのではないか。
- 4つの機能というものをあげてもらったが、市町レベルでいうと、公民館は、市民の直接の学習の場として非常に大事な拠点の一つなので、生涯学習センターについても、資料1のP8の図に入れてほしい。
- 様々な機能を統合する頭脳にあたる部分を新博物館に期待している。図書館的な機能、博物館的な機能、美術館的な機能を統合するいい名前をつけて打って出れば、他県にないインパクトのある組織・機能としても出せるのではないか。
- 博物館を、全体をカバーするものにするとはいかがなものか。それぞれの拠点の特徴を分かりやすくして、それぞれのニーズに応えればよいのでは。図書館は、いわば資料が本という複製品であり、いくつか同じものを持てるのに対し、美術館や文化会館は、原則的に本物を見る場所。博物館は、本当は現物を見たいが、なかなか現物がなくて、モデルやレプリカを置いたりしている。そういうところで役割が違ってくるのではないか。博物館は本物じゃないと必ずしもだめというわけでもなく、両方に機能がまたがっているところもある。資料のあり方みたいなものから、拠点の性格がうまく整理ができないか。
- 「機能」の中に「企画立案」が抜けているが、あってしかるべきである。モノを見せたいといっても、いつ、どこで、何を見せるのかというのは、企画立案機能がないと、単なる場の提供に終わる。県全体としてのミッションがありつつ、それを各施設で実現することになる。
(5)文化振興拠点部会報告(案)について
- 博物館法などに基づき一般的な定義で「博物館とは」と書くのではなく、三重県の文化拠点のひとつとしての「三重県の博物館とは」が議論になるべき。
- 文化芸術振興基本法をふまえて「文化とは」が書かれているが、一人ひとりにかかわる生き様やの立ち居振る舞いなどを文化というなら、ここで「文化振興とは」は日本語として違和感がある。「向上」なら分かるが、何かを高めていくために他の力を加えてやっていこう、という形になってくるので、人が自ら何かやっていこうという話とはくっつきにくい。
- 三重県が所管する博物館なら、三重のアイデンティティーを明確にする、あるいは明確にして県民一人ひとりが認識するという立場もあっていいのでは。博物館の資料を見ていると、その中で三重が他とどう違うのかということを明確にするミッションが少なくともあるという考え方をする必要がある。何をシステムとするのか、何を研究するのか、「三重」の地域博物館であるということを意識すべき。
- 「地域」と言ったとき、その地域の歴史や文化と切り離してこれだけが大事だ、それだけが独立していいものだ、というニュアンスがあるので違和感がある。そうでなくて、外から三重県のことが知りたいといったとき、ここに来れば大丈夫だというだけのものがないといけない。それが三重県の博物館でないといけない。いろんな人の意見を聴いたりする時、その人が育ってきたその地域の文化を知らないことには理解できない。その意味では、「地域」を強調しないといけない。
- 図書館・美術館と博物館とでは、地域との関わりが違ってくる。博物館が担うべきは地域、本物である。博物館は、他の拠点より地域を意識すべき。
- 三重県らしさは博物館には大事だが、この案では「地域」を安直に使っている。中から見た地域の特異性のみ強調することになってしまう。外から冷静に見る必要がある。
- 登録博物館になると、博物館法の規定を全て受ける。教育委員会の所管の博物館は、だいたい法にのっとった博物館である。国立でも、法にのっとっていない博物館もある。生涯学習部門を教育委員会でなく知事部局へ移すとそれが変わってくる。例えばボストン美術館は収蔵品を何も持っておらず、全て借り物を展示する。いいかどうかは別として、それも一つのあり方である。
- 枠を広くして議論するという意味ではいいが、拠点に求められることの一つが「人を育てる」ことである。このことについては、教育委員会サイドでなくて本当に良いのか?
- 博物館の機能は、生涯学習施設というよりも、中核的な学校教育施設であるといえると思う。子どもが実物に触れる機会が少なくなってきている。博物館は本物をそろえておくところだということからも、学校教育の大切な手がかりである。昔の生活を体験するとか自分たちのやりたいことを、博物館を通してやるということが大切。大切なことについては、予算を確保していくべき。今の時代に相応しいものを作っていく方向でないといけない。
- 学芸員の資質向上ということがあるが、それにはPFIと指定管理の議論も避けて通れない。ただ指定管理でどうなったか?というところもある。県立は職員の研修の場を設けて欲しい。学芸員の資質向上、司書のレファレンス能力向上のための人材育成のために県立は何をすべきか、お考えいただければと思う。
- 博物(館)としての機能は、資料をコアコレクションとした博物館の機能がどういうことをやるのかをまず考えるべき。そのメジャーな部分が博物館という形をとって、そこで様々なサービス事業なり支援が可能になるという位置づけになるのではないか。例えば、図書館で全て情報がまかなえるものではない。博物館が資料を持っていることもある。もっと詳しく調べたいと、また図書館へもどってきたりすることもある。美術館にも同じことがいえる。独立したものでなく、文化振興というか、学習の活動の場の観念からいえば、有機的な連携がとられてしかるべきである。三重県全体の文化振興での中で、それぞれの機能がどういうことをやるのかという時のメジャーな施設として、博物館が、図書館が、美術館がある。そういう位置づけにすると、連携の話ができるのではないか。
《配布資料》
- 事項書
- 出席者名簿
《検討資料》
- 第2回文化振興拠点部会 検討の進め方
- 資料1 第1回文化振興拠点部会検討内容の整理
- 資料1(別紙)文化、文化振興、文化力の関係
- 資料2-1 文化振興拠点としての施設の整理の考え方
- 資料2-2 県立の「図書館」、「博物館」、「美術館」、「文化会館」に求められる機能等について
- 資料3 部会報告(案)について
- 資料3別紙 文化振興拠点としての博物館を考える(案)
《参考資料》