平成19年度第5回新博物館のあり方部会結果概要
日時 平成20年1月18日(金曜)13時から16時
会場 三重県水産会館 4階 研修室
1 要旨
平成20年1月18日午後、三重県水産会館4階 研修室において、第5回新博物館のあり方部会を開催し、新博物館のあり方等について、審議を行いました。
2 内容
「新博物館のあり方について」(答申案)のとりまとめに向けて意見交換を行いました。とりまとめについては、部会長に一任とし、出された意見をもとに、部会長と事務局で答申案の修正を行い、全体会に提出することになりました。
審議のようす
3 委員から出された主な質問・意見・感想
(1)全体の構成について
- 文章中、ひらがなで「みえ」「みえけん」といったり、漢字で「三重」「三重県」といったりしている箇所があるが、どう表現を区別しているのか、整理が必要なのではないか。
- クライアントセンター、利用者中心の考え方で運営していくという言葉が入っていない。利用する側の視点から考えるということを明確にどこかに入れて欲しい。
- 学校、子供などに対してはアウトリーチ、専門的でない人たちにアプローチしていく仕組みの考え方が大事だが、この言葉も入っていない。これらの言葉が入ると博物館の考えていることがもっと明確になるのでは。
- 文章に魂が足りない。民間で企画するときには、これを読んで決裁をする人の情感に訴える必要がある。部会長の熱い思いを入れて欲しい。
- パブリックコメントや県民懇談会で多岐に渡る意見が出ている。気になることは、自然系が弱いという意見がたくさん出ていることである。答申の中には、少なくともそういう意見があって、そういう視点をこれから入れていくことを打ち出す必要があるのではないか。
- 今、人気がある博物館はテーマ博物館。こういう総合博物館としてやっていくとき、人文と自然が合致するどういう場所で立地するのか。分館の話もあるがこれも含めて考えたほうがいいのか。従来の三重県立博物館はどちらかといえば自然系に近い形で運営されてきたかと思う。
- 2ページの経緯に結論が書いてあるが、ここで結論まで全部言ってしまうと誤解を招かないか。最後に総括して結論を書くべきか。
- 一般の人がこの「あり方」を読んで理解できるか。今までの陰気で暗い博物館でなくて、親と喜んで訪ねてくる博物館ですよ、といった簡単な説明ができないか。答申ではこういう形にしておいて、県が構想を発表するときに分かりやすい要約したもので説明してもらいたい。
(2)「はじめに-新博物館検討の経緯」について
- 「はじめに-新博物館検討の経緯-」のところで、「現在、約28万点の資料が収集・収蔵されています」とあるが、それだけではなく、資料の収蔵場所がいっぱいで保存環境も悪いというところから新博物館整備の話がはじまっているので、単に「収蔵されている」だけでは弱いのではないか。どういう資料が現在あるかを説明して、内容について説得する必要がある。どんなものがあるか県民がつかめるような記述があればよい。
- 1ページの下から8行目あたりのところで、公文書館について、「地域の歴史を伝える役割を担う施設」とあるが、歴史資料だけでないので、「歴史・文化」として欲しい。
- 「博物館と公文書館を一体的に整備」という言い方でよいのか。「博物館に公文書館機能を組み込んで作る」という言い方ではイメージがまた違ってくる。博物館と公文書館が平等で二つの建物が建つイメージになってしまわないか。
- 公文書館を独自で作れという話もある。あくまでもこういう言い方をせざるを得ないのでは。
- 公文書館は博物館とは根拠法などは異なるが、レファレンスという共有する機能を結びつけるという方向を今回打ち出している。公文書館・博物館のレファレンスは図書館のそれとはまた違う。
(3)「めざす博物館の姿」について
- 3ページに子どものことが入っているが、4ページの「みえを学び、・・・」のところにも入れて欲しい。中ごろに書いてある「地域の活力が弱まる」などの部分は、子どもたちが県外の大学へ行って帰ってこないなど、子どもにもあてはまる。みえを知り、学び、発信することが大事。自覚を持って社会へ出て行って、社会で活動するときに発信していって欲しい。例として、「このような状況を解決するために」の次、「県民一人ひとりが」の前に「子どもたち」と入れたらどうか。
- 6ページの「めざす姿」で、公文書館のことが書かれているが、少し異質に感じる。それより前の部分にも何らかの記述があったほうが関連性が分かる。公文書館は「一般的ではない利用者を対象とする」とあるが、区別せず単なる「利用者」でよい。
(4)「博物館の基本的な性格」について
- 9ページ「次代を担う子どもたちを育む博物館」に学校教育のことが書いてあるが、子どもがひとりで博物館に行くことはまず考えられない。まず学校から、次に保護者と一緒に行く。最近は親も余暇を子どもと一緒に過ごすことを考えているが、レジャーが多く、博物館などにはなかなか連れて行かない。親の考え方ひとつで、博物館で本物に触れるチャンスをもらえない子どももいっぱいいる。催しものをしたり、PRして親の目にとまることを考えないといけない。親や教師を意識すべき。
- 博物館を県民がどう活用するかというところが大きな問題。保護者が博物館を活用する力をもっと持って欲しい。次代を育成するというアピールが必要。学校教育でどう活用するか、ソフト面での関わりが重要。保護者に関しては、次の「多様な参加の機会を設ける必要があります」のところである程度収まっているのでよいのではないか。
- 保護者のことまでは書き込めないと思う。それはこれから作っていくもの。連携しようとしても学校の壁が厚いと感じるので、どこかに学校からの活用のことが書いてあれば、連携のきっかけになると思う。この一言を入れれば、次世代教育という面で、突破口になるのではないかと思う。
- 学校との連携については、学校教育に博物館を活用するための組織づくりのことを書く方向でどうか。
- 子どもたちが親しむことによって次の繰り返しがある。親の世代をどう教育するかが問題。博物館をどう利用したらいいか、先生や親の世代をまずトレーニングする必要がある。福井県でも10年計画で取り組んでいるので、それも参考に生かせればどうか。
- 子どもが親を連れて行って楽しければ、また行こうと思う。子どもがまた来たくなる展示や説明があればよい。授業をつぶして博物館へ連れて行くのもゆとり教育とか言っているなかでは難しい。博物館からメニューを学校へもっと公開すればよい。学校に対して十分な情報提供とお互いの打合せが必要。
- 子どもに対する扱いは県民、学校、保護者に対してアピールする文を入れる。
(5)「博物館の機能」について
- 13ページ、「展示・情報発信機能」のところで、常設展示をつぶして企画展示にするのか、常設展示と別に企画展示を設けるのか、どういうレイアウトを目指すかが分かりにくい。
- 13ページ「大規模で固定的な常設展示エリア」の次の「展覧会等を開催する企画展示エリアからなる」の部分は省いたらどうか。
- 「展示スペースと設備を確保することも重要」のところは、「スペース」と「設備」の順番を入れ替えたらどうか。
- 11ページ「博物館の機能」のところに、もう少し子どもとの関わり、参画ということを入れられないか。
- 子どもたちは個人として関わるのか、集団として関わるのか、どう捉えているのか。子どもたちが博物館などに大きく参画するのは、学校教育の中である。
- 14ページに遠足、社会見学、出前授業のことが書かれているが、授業内容に一致していないと、授業をカットして出かけたりはできない。
- 学校の先生に入ってもらってプログラムを開発すればよい。学芸員や博物館に対し一方的に期待するのではなく、両者が一緒に考えていけばよい。
- 教育委員会でも先生ばかりでなく事務局からも人が入って県政を進めている。博物館も先生が入って進めていくことが必要では。入ってもらった先生にも県民のための博物館という意識を職員としてもってもらえる。人事のことに関わるので書けないが、教育委員会と協力してやって欲しい。
- 学校がどう利用するか、学ぶべき単元・要素などを常設展示の中へ盛り込まねばならない。県民が小学生のときに一度は必ずそこへ行くという了解の中でやればよい。
- 13ページ、「展示・情報発信機能」で、固定的な展示は時代に即していない。それも大事だが、テーマに沿った企画展示なりで、人をひきつけるべきだと思う。子どもが子ども対象のものに興味を持つかというとそうでもない。大人が興味を持っているところに寄ってきたりする。「子ども」という概念は必要だが、「子どものために」が果たして必要か。何回も来てもらうには工夫もいる。子どもにあまりこだわって欲しくない。
- 子どもに来てもらうことも一つのキーワードだが、内容が本物であって、大人も共有できないといけない。
- 子どもには本物を見せなければ。
- 地域にも子どもセンターを作って活動しているところがある。そいういう人たちも博物館への子どもの参画に関わる「団体」に入ると思うが、説明がないと、初めて読んだ人は、学校、子ども会などに限定して捉えてしまうのでは。
- 展示情報発信機能のところではここが詳しいとわかりやすいが、巡回展の記述だけ詳しすぎるのでバランスを考えてトーンダウンしながら、テーマを持って変化していく展示の継続が必要だということが書けないか。
(6)「博物館施設の整備の考え方」について
- モクモク手作りファームで集客施設をどうやって作ってきたかというと、ひとつのテーマ、テーゼを掲げてやってきている。掲げるテーマを作ると分かりやすいと思う。商業的に施設構成のことで民間が考えるのに「来る人が利用しやすい」ということがある。バリアフリーとか、ベビーカーでも大丈夫、とか。「ミュージアムショップ・ミュージアムレストラン・貸しギャラリー」などの記述が17ページにあるが、よくある普通のレストランなどの施設ではなく、三重の食文化が感じられるようなレストランとかであるべき。
- 17ページのミュージアムショップなどの部分は、博物館本来の収蔵庫などについては詳しく書いてないのに、ここだけ唐突な感じがするので見直しを。
- 17ページのミュ・[ジアムショップの部分は唐突だからなくすということでなしに、楽しそうな部分なので、うまく残して欲しい。三重の食文化を分かるようなレストランとかはお客を呼び込むひとつの材料ともなるし、経営に効果が出るように考えて欲しい。
- 女性パワーは強いので、女性客を狙わなければ。子どもを連れてくるときも、リピーターとなるかどうかは、ちょっとそこでお茶ができるとかいったことがあるかどうか。利用者の視点は全体的には盛り込まれていると思うが、それでも足りないと感じるのは、行政の立場では完全にはその視点に踏み切れていないからかもしれない。
- 展示も子どもに見せるだけでなく、創造する場になっていけば、連携にもつながっていくのではないか。
- 公共施設には利用者の視点が大事ということは基本的に変わらない。13ページに巡回展の記述があるが、国宝級の資料などはさわれない。単なるショーケースでとらえた展示スペースでは駄目だと思う。
- 国宝とか重要文化財の資料を借りるにはそれなりの設備が必要で、それを備えている博物館は県内では四日市市立、斎宮歴史博物館、神宮徴古館など少ないので、作っておく必要がある。
- ミュージアムレストランもバランスを考えてできれば書き込みながら、名称を入れるよりどういう考えで憩いの場を作るかというニュアンスで書きたい。
(7)「博物館の管理運営の考え方」について
- 多くの人が来るということばかりでなく、博物館のスタッフのことで、従来を越える十分な活動ができるだけの必要な人数を持って運営するという経営方針ができないか。
- これからの博物館には経営哲学が必要。望ましい姿を成功させるには、経営の目標は常に開かれ、人が来て、文化が継承されていくこと。それが持続していかないと失敗する。今までの博物館が廃れてきたのはそこが遅れているからではないか。答申の1つの柱として「博物館にも経営哲学を」ということを入れてはどうか。
- 経営哲学の言葉を入れるとしたら、9、10ページの「基本的な性格」の中に「経営哲学を持った博物館」と入れるか、18ページの「管理運営の考え方」に入れるかのどちらかか。
- 「博物館の管理運営の考え方」に前文を作って経営哲学の話も入れたい。
(8)「新博物館の実現に向けて」について
- 最後の「実現に向けて」の文章がなんとなく頼りない。もう少し前向きな姿勢にならないか。語尾が全部「必要があります」となっている。知事にこの答申をもって訴えていくのに、この程度の表現でいいのか。
- 感情を込めた言葉にしないと、博物館を別に作らなくてもいいと思われてしまわないか。現県立博物館のみすぼらしい姿は、今まで非営利組織の生産性が考えてこられなかったからではないか。民間よりこういう組織の経営の方が難しい。先端の考えを入れていかないと失敗する。経営者の考え方が重要。公立は経営形態もしばられている。総合博物館だから余計に経営哲学らしきものを真剣に、この場でなく別の場でもいいので討議すべき。そうすれば持続できる視点が出てくる。
- 諮問そのものも文化振興の背景なり生涯学習、知の拠点の充実を図っていかなければならないとあり、知事もお金がなくてもやることはやっていかねばと意欲的な発言をされている。「こういうことをやればいい」という形で終わるのではなく、文学館や公文書館といった県民の発言も貴重な声と受け止めねばならないし、「新たなスタートとして、変わっていく時代への対応が必要で、住民満足のために努力していくべき」というように書けばよいのでは。それは「三重の文化振興方針(仮称)」の方に書けばよいかもしれないが。
- 「実現に向けて」はタイトルも考え直したいが、県関係者に対してこういう活用をして欲しいというニュアンスを入れ、また次のステップとしてこういう発展があるという姿勢のニュアンスを入れたい。
- 「実現に向けて」は委員の皆さんの思いを書くということか。「実現に向けて」の中ではなく、別に「おわりに」として書いてはどうか。
《配布資料》
- 事項書
- 出席者名簿
- 配席図
- 第5回新博物館のあり方部会 検討の進め方
《検討資料》